根拠に基づく妊活中におけるお酒・アルコール摂取と不妊への影響

根拠に基づく妊活中におけるお酒・アルコール摂取と不妊への影響

お酒

妊活中のお酒・アルコールの摂取はどれくらい不妊に影響していくのでしょうか?

男性もアルコールによる影響が出る一方で、女性の生殖やエストロゲンやプロゲステロンといった

性ホルモンにも影響がでるため、妊娠を希望するご夫婦は適度な飲酒習慣が必要になりそうです

 

お酒やアルコールの摂取と妊娠ととの関係

女性の飲酒は今の時代は珍しい事ではなく、逆に飲酒の機会が多くて、妊活中だけれど、

お酒を飲まなくてはならない機会も多くて悩むくらいになってきています。

今から60年前の昭和29年に行われた調査では、女性の飲酒率は13%程度でしたが、

それから約50年後の2003年の調査では63%と、約5倍にも増えているのです。

一方で、男性の飲酒率はここ30年以上横ばいで変わらないといった

状態です。また、女性でも最近は若い方の飲酒率が急激に伸びているのです。

一昔前は、女性の飲酒は珍しく、さらに男女とも飲酒の習慣が出てくるのが

中年以降に多い傾向があったのです。

一昔前までというのは、妊娠にかかわる大事な時期に飲酒の習慣があまりなかった時代です。

今は女性の社会進出もすすみ、男女雇用機会均等法で

女性も男性と同じように働けるという事がある一方で、

仕事でのお付き合い・ストレスなども増えて、妊娠しやすい体質つくり

とは少しかけ離れてきているように思います。

妊活中のご夫婦には、お付き合い程度の機会は仕方ないと思いますが、

妊娠体質にするためにはたくさん飲んだり、頻繁にお酒・アルコールを摂取

するのは控えていった方が良いのかもしれません。

お酒と不妊についてみていきましょう。

 

飲酒の影響は女性の方が受けやすい

飲酒の影響は男性と女性とでは影響の出方に違いがあります。

それは、女性は男性に比べて体が小さく、肝臓が小さいことがあげられます。

また、体脂肪が男性より多いこともあり、アルコールは脂肪に溶けにくいため、体脂肪が多い場合、

お酒を飲んだ時の血中アルコール濃度が高くなりやすいといった点もあげられます。

さらに、アルコールは主に肝臓で代謝されますが、

女性ホルモンであるエストロゲンは肝臓のアルコール代謝を抑制するため、

女性ホルモンの変化によって血中アルコール濃度に変化が出てきます。

なので、より女性の方が飲酒量や頻度には気を付けた方がいいと言えますね。

 

飲酒・アルコール摂取による不妊への影響

飲酒・アルコールによる不妊への影響は色々ありますが、その中でも特に重大な点をあげたいと思います。

 

・アルコールを分解する過程で発がん物質ができる

アルコールそのもの発がん性がありますが、少量の飲酒で赤くなる体質で、

2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱い人では、アルコール代謝産物の

アセトアルデヒドが発がん性物質になり、細胞にダメージを与えてしまいます。

 

・飲酒により糖質の過剰摂取になってしまう

飲酒、アルコール摂取により、レプチン(ホルモン)耐性が出来上がってしまい、

食欲の制限がききにくくなったり、自律神経系の制御や、ホルモンバランスの制御も

できなくなってしまいます。レプチンとは脂肪細胞の中にあるホルモンで、

代謝の制御や自律神経系の喚起、ホルモンバランスの制御にも大きくかかわる

非常に重要なホルモンです。最終的に他のすべてのホルモンに影響を与えて

脳の視床下部のあらゆる機能を制御するホルモンなのです。

そのため、性ホルモンなどのバランスが乱れやすくなってしまいます。

飲酒によって糖質の摂取量が増える事で、レプチンの分泌量が増える一方で

レプチンの受容体に耐性ができてしまい、レプチンの量が減少してしまいます。

中性脂肪の多くなる食事や飲酒をしていると、レプチンの量が減少することが

研究で証明されています。

 

・質の高い睡眠がとれなくなる

質の高い睡眠がとれなくなることは、非常に心身への悪影響が大きく出てくるように

なってしまいます。

お酒は百薬の長と言われて多少飲める方が健康的だといわれてきたかとおもいます。

しかし、飲む時間帯によっては百害あって一利なしなのです。

お酒をのむと、ドーパミンが分泌されて興奮状態になり、交感神経が高まり、

睡眠中も何度も目が覚めてしまい深い睡眠がとれなくなってしまいます。

 

また、お酒自体、利尿効果で体内を脱水状態に近くしてしまうので、やはり眠りは浅くなります。

お酒を飲むと一時は身体を麻痺させるので強制的に眠らせます。その時は泥酔しているので

深く眠っているのかと思われがちですが、その逆で眠りの質は良くないので健康には悪影響です。

できれば寝る前にお酒を飲む習慣は妊活中はやめましょう。特に、寝る2時間前は要注意ですね。

 

男性の精子の質にも影響するアルコール

イタリアのミラノの不妊治療クリニックで体外受精や顕微授精を受けるために検査を受けた男性323名を対象に

した、アルコール摂取量と精液検査結果についての研究Andrology では、

飲酒量と精液検査結果で統計学的に有意な差がみられたのは、精液量、精子濃度、総精子量についてでした。

全く飲まない男性が、必ずしも、精液検査結果が最も良好だったわけではなく、

お酒を飲む男性のほうが良好だったのは精子の数です。

そのため、お酒を全く飲まないことが良いわけではなく、

適度に摂取しているとそれはそれで妊娠しやすさにつながっている面もあるようです。

 

妊娠後もアルコールの摂取は胎児に悪影響

妊娠後も赤ちゃんへも悪影響なので我慢することになります。

妊娠中に過度にアルコールを摂取する場合、胎盤を通して血液からアルコール成分が

いくようになります。そうすることで、まだ未熟な胎児にとっては肝臓などでの処理ができず

器官の障害や神経の発達が障害を受けたりもします。

さらに、妊娠中に飲んだお酒の影響はいつ胎児への影響が出るかはわからないため、

基本的には妊婦さんはお酒を止める方が殆どです。妊活中でしたらいつ赤ちゃんが授かっても

おかしくはないので、早めにアルコールを摂取する習慣から切り替えて、

いつ赤ちゃんが来てくれてもよいようにしておきましょう。

そして、男性パートナーである旦那さんの生殖にも影響するので、夫婦で控える様にするとよいでしょう。

 

適量と言われる量でも、妊娠しにくくなる影響は出てきます

複雑な代謝の過程で、脳や性ホルモンへの影響が出てくるのが飲酒・アルコール摂取です。

性ホルモンへの影響がでれば男性では勃起障害(ED)、女性では月経不順を招く可能性もあります。

たくさん飲んだり、頻繁に飲んだら健康障害を気づかないうちに引き起こしてきます。

 

適量であれば体外受精での妊娠率に影響がでない?

ハーバード大学のEARTH Studyでは、不妊治療前の300人の女性の

1年間のアルコールやカフェインについては

適量(たとえば、アルコールであれば1日12g未満程度であれば、

ART治療成績(子宮内膜厚、獲得成熟卵数、着床率、妊娠率、出産率)に悪影響を

及ぼさないことがわかりました。Human Reproduction

アルコールは飲みすぎなければ妊娠率や出産率に差ほど大きな影響は出てこない

という事がこの研究では明らかにされています。

他には、

デンマークの研究BMJでは、妊娠を望む女性6120を対象に週に14サービング以上の飲酒の場合は

妊娠しにくくなるのに関連する傾向がみられるものの、

週に14サービング未満の飲酒は妊娠する力への明らかな影響はみられないことが発表されています。

この研究では、飲酒量は、サービングとし、アルコールの種類別の1サービングはこの量です。

・ビール:330mL(缶ビール1本)
・ワイン:120mL(グラス1杯)
・蒸留酒:20mL

ただ、14サービングも飲酒する女性が全体の1.2%程度だったため、

結果をそのまま受け止めるのには要注意とされています。

 

日本人との違いや、適量の基準の違いなども考慮しても

全く飲まない方が良いという事ではありませんが、適度の飲酒がやはり好ましいのでしょうね。

 

お酒を飲むほど妊娠しにくくなる?

と思えば、一方では妊娠アルコールの摂取量が増えていくと妊娠しにくくなるという

研究報告もあります。

体外受精に臨む2,545組のカップルを対象にアルコール摂取量と4729周期の

治療成績との関係を調べたアメリカの研究(Obetetrics & Gynecology)では

週に4drinks以上のアルコールを摂取する女性はそれ未満の女性に比べると

出産率が16%も低く、女性も、男性もどちらも週に4drinksのアルコールを摂取するカップルは

どちらもそれ未満しか飲まないカップルに比べると

出産に至る確率は21%、受精率が48%低かったという報告がされています。

アメリカの1drinkはアルコール14グラムとされているため、

4drinkも摂取していたら54gで日本でいうところの2.7単位ほどになるため

やはり多すぎる量と言えるでしょう。

週に4単位を越えないようにするのが目安になりそうです。

 

体外受精胚のクオリティーや杯盤到達率にも影響あり

食事と生活習慣が胚質および胚盤胞到達率に与える影響について研究された(1

ものでは、体外受精を行った269名から得られた2659個の胚の状態と、

食事および生活習慣との関係について分析しています。

その結果、初期胚のクオリティを下げるものとしてアルコールが関係があり、

胚盤胞到達率を下げるものとしてもアルコールが関係していました。

やはり、適度な飲酒なら良いでしょうが許容量を超えると

体外受精といった不妊治療でも成績が変わってきてしまいますし、

卵子やその後の発育にも影響が出てきてしまうといえそうです。

 

厚生労働省がすすめる アルコール摂取許容量とは?

厚生労働省では、通常のアルコール代謝能がある日本人にでは、

節度ある適度な飲酒量として1日平均純アルコールで20グラム程度であると定めています。

 

1日の飲酒量の目安の「アルコール20グラム」は日本の基準飲酒量の1単位にとして計算していくと

日常ではちょっとわかりやすくなるかもしれません。

お酒の種類によって、アルコール度数がちがうため

アルコール20グラムというのはどれくらいの量なのかを見てみましょう。

それぞれのお酒の種類ごとの1単位の量になります。

 

・ビール(アルコール度数5度)   中ビン1本(500ml)
・缶チューハイ(アルコール度数5度)1缶(約500ml)
・ワイン(アルコール度数14度)  グラス1杯(約180ml)
・日本酒(アルコール度数15度)  1合(180ml)

 

なので、1日に飲める量は1単位を目安に飲む量はこれくらいまでに適度にという事です。

そして、厚生労働省では週に2日は休肝日にするようにという提案していますので

そのため、週に5単位までが推奨されている量ということになりますが、

 

上記の研究結果などから見ても、2単位も摂取してしまうと妊娠しにくくなってしまう

可能性の方が高そうです。

あくまで、厚生労働省で出している基準は妊娠するためのガイドラインではないため

参考程度にとどめるとよいでしょう。

 

アメリカ生殖医学会のアルコールについてのガイドライン

2006~2016年に行われたアメリカの研究では、300名の女性で493周期の体外受精を行い、

アルコールおよびカフェイン摂取と妊娠成績の関係について検討した研究があります。(2

アルコール摂取については、中央値は1日5.6gであり、

アルコール摂取量別に、最大E2値、子宮内膜厚、卵成熟率、受精率、臨床妊娠率、出産率を検討していますが、

意外にも全ての項目で有意差を認めませんでした。ただ、有意さはないものの、

アルコール摂取が、0.1~6.0gの人は出産率が46%と最も高く、

妊娠を目指している方のアルコール摂取については、米国生殖医学会(ASRM)では

妊娠前のアルコール摂取1日1単位(20g)まで、妊娠中のアルコールは0としています。

 

妊活中は全く飲んではダメというわけではないものの、飲んでも1日20g1単位が限度としています。

休肝日を週に2日以上は設け、週に4単位を越えないようにしましょう。

 

妊娠後の生活も見越して、男女ともお酒の習慣を変えて

辞めないといけないと思うとストレスも溜まりかえってよくない事も出てきます。

好きな方にとって、我慢するのはつらい事ですよね。

量や頻度は徐々に減らしていきましょう。

飲んでも1日20g1単位が限度としています。週に4単位を越えない事も目安です。

寝る2時間前は飲まないようにするといった厳格なルールを作り守るようにしてください。

お酒が飲みたいのか、妊活がしたいのか

飲みたい欲求が強い時は一度立ち止まってみてください。

妊娠してからはアルコールは0です。

不妊克服のためにできる事はしたいのであれば、

お酒を我慢するのも、妊活のやりたいことの1つです。

 今までの良くない習慣を少しづつでも変えていく事こそが妊活になりますよ。

 

参考文献

Fertil Steril 2008; 90: S1

Hum Reprod 2017; 32: 1846 doi: 10.1093/humrep/dex237

この記事の著者

保健師・看護師

岡田和子

山梨医科大学卒業、看護師・保健師国家資格取得。 NPO法人日本不妊カウンセリング学会所属。
病院や企業にて心と体の健康管理に12年従事した後、不妊カウンセラーとしてパーソナルカウンセリングを行う。

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