不妊で焦る 本当に必要?不妊治療を始める前に知っておく事

不妊で焦る 本当に必要?不妊治療を始める前に知っておく事

NG 女性

子どもができないと周囲の妊娠報告などによってもとても焦ってきてしまうものです。

はやく妊娠したいという思いから不妊治療へ進む方も多い事でしょう。

 

また不妊の定義について、日本産科婦人科学会では、

健康的な男女が避妊せず性生活を持ち、1年経過しても

妊娠しない場合という事となっているため、妊活を始めたら1年以内に妊娠できないと

焦ってしまうかもしれません。ただ、焦って、不妊治療を選択することが本当に

正しいのかどうかという点はよく考えて進む必要性があります。

 

不妊でないのに不妊治療を受ける人が増えている

今では5.5組に1組が不妊とも言われていますし、

2015年社会保障・人口問題基本調査では、

2015年生殖医療(体外受精・顕微授精・凍結胚を用いた治療)によって誕生した児は

51001人と全出生時1008000人の5.1%になっています。

日本では、不妊の検査や治療を受けたことがある、受けているという割合は全体で18.2%

となっています。不妊治療を受ける人が増加していることがうかがえます。

しかし、不妊ではない方が不妊治療を受けているという事も増えていると指摘されています。

 

実際に生殖医療に携わるドクターたちにきいてみると、

「セックスレスの夫婦が非常に多い」

「2~3ヶ月でいいから週に2~3回セックスしてみたら自然妊娠する患者さんが多いと思うんだけど……」と、

本当の「不妊症」ではない患者さんが多いということを常に言われます

引用 女医が教える 妊娠するためのセックス

 

本当は不妊症ではない、不妊の定義を満たしていない

妊娠した女性

「不妊症」という言葉を良く聞くと思いますが、

本来の定義は「通常の夫婦生活を行っているのに一定期間(一般的に2年間)妊娠しないこと」とされています。

この「通常の夫婦生活」というのは「昭和のセックス事情」で週に2〜3回を指すそうです。

排卵日を狙って月に1〜2回セックスして妊娠できなくても不妊症の定義は満たさないということです。

引用 女医が教える 妊娠するためのセックス

 

妊娠しないから不妊症ではないかと不安に思うかもしれませんが、

男女とも加齢とともに年齢上昇すれば妊娠までに時間がかかるようになってしまう事、

そして妊娠確率は何も問題がなかったとしても低下していってしまいます。

まして、性生活が少ない、規則正しい生活をおくれていないといった要因は

不妊リスクを高め妊娠確率が低下してしまいます。

 

不妊治療は魔法の治療というイメージ

不妊落ち込む女性

不妊治療をはじめたらすぐに妊娠するものだと思っていた・・・

 

これが不妊治療をした人の多くが語るところです。

確かに年齢が早く、そしてできるだけ早期に体外受精を受けた場合は妊娠確率も高い

治療法ではあるものです。しかし、実態はそうではありません。

不妊治療を行っている多くの医療施設では、「リスクが増えるわけではない」と説明しています。

不妊治療の治療成績についても公表されている部分もありますが、

授かるのならば、治療を受けた人の多くは授かっているというイメージをもち、

何の疑問も持たずに治療を始めてしまう夫婦も少なくないのです。

そのため、治療の必要のない夫婦でさえも不妊治療を行うようになっていますし、

一方で、こういった特に問題がない夫婦が成功率を上げ、不妊治療はスゴイ、簡単に授かる、

はやくに授かるといった医療施設の宣伝に繋がっている可能性もないわけではないのです。

 

最先端の技術による「夢の治療」のようなイメージが膨らみます。実際に、不妊治療をうけ、その後に

赤ちゃんを授からずに治療を辞めたという女性への調査でも、治療を始める事に何のためらいもなかった

と9割以上の人が回答しています。そして、不妊治療が急速に広まっていっています。

 

不妊治療のステップアップがまた不妊リスクになりうる

不妊治療 夫婦と医者

日本の不妊治療は一般的には3つのステップから成り立ちます。

タイミング療法・人工授精・体外受精です。

タイミング療法と人工授精は限りなく自然に近い治療方法です。

そして、ステップアップしながら妊娠するまで、治療を受ける女性が望むまで

ステップアップしながら継続されていきます。

 

不妊治療に用いられる技術を生殖補助医療技術(ART)には以下の3種類あります。

人工授精:精子を採取し処理後に子宮内に送り込む方法

体外受精:体外に取り出した卵子にシャーレの上で精子が自力で侵入して受精する環境を整える方法

顕微授精:体外に取り出した卵子に極細ガラス針で人為的に選んだ精子を穿刺(せんし)して授精させる方法

 

これらの治療によって、妊娠していくことがサポートされますが、

これらにはどれも高いリスクがある事はあまり言われてはいません。

しかし、実際に治療を受けていった方々は痛感していきます。

心身共にストレスがかなりかかる事、仕事との両立の難しさ、

また妊娠して行かない事で焦り、男性もプレッシャーを感じ

性欲低下、セックス回数の減少、勃起障害や射精障害を併せ持つようになるリスクが高まります。

 

妊娠したいと焦り30代40代で不妊治療に駆け込みがち

現代では晩婚化がすすみ、初産年齢も引きあがり30代に突入しています。

30代で初めての子を授かり産んでいくという流れであるため、

初めから年齢を気にして不妊治療をすぐに開始するというご夫婦も増えています。

年齢としても妊娠しにくい上に、ストレスもかかっていく、さらに

検査をして妊娠確率が高まらないタイミング療法・妊娠確率がそもそも低い

人工授精の期間を経て体外受精へとステップアップ治療をしていくことで期間が伸び

さらに妊娠確率が下がるし、受精はしているのに着床しないという事で多くの女性が悩んでいます。

また、40代では妊娠確率が非常に低下し難しいのにかかわらず、積極的な

体外受精をすすめてくる医療機関も存在します。

また、必要がない場合であっても不妊治療の中でも体外受精や顕微授精をすすめてくる

医療機関もあると言います。授かりたい一心ですから、良いと聞けば自分で選択し決断を迫られる中で

かさむ治療費に苦労しているご夫婦も存在します。

 

タイミング療法や人工授精で妊娠できる可能性がある場合でも、

不妊クリニックによっては、体外受精や顕微授精を薦められることも多いと聞いています。

引用 不妊治療ホントに必要?

 

タイミング療法をしても妊娠確率は上がらない!

いらいらする女性

妊娠しないのは受精していないからとタイミングが合っていない事を気にされる女性も多いです。

排卵のタイミングに合わせる事こそが大事と、不妊治療へ進む方も多いはず。

でも実際には性生活が少なければタイミング療法を受けても妊娠確率は高くなりません。

アメリカ生殖医学会の委員会見解Fertil Steril. 2017;107: 52-58.では、

毎日性交するカップルの周期あたりの妊娠率は33%なのに対し、週1回のセックス回数になると15%に

低下するとの記載があります。

その一方でタイミングをあわせて性交をしても妊娠率は高くならないという研究報告もなされています。

日本の不妊治療のステップアップの基準は海外である欧米の不妊治療に合わせています。

しかし、日本の性生活の回数の少なさは有名です。

海外では毎日のセックスは妊娠しにくくなります!というように、回数が多いことが当たり前。

それでも1年妊娠しない場合は、不妊治療を考えようという水準なのですが、

そこに合わせても、不妊治療しても妊娠しないという事がおこってしまうのも

しかたがない事なのかもしれません。

それでも、回数が少ないのに、タイミング療法を行っても妊娠確率は上がらない上に、ストレスがかかり

より妊娠しない焦りも感じ妊娠しにくくなってしまいます。

 

不妊治療を受ける女性のストレス度は心身症レベルに

 

高度生殖医療と一般不妊治療を受けている女性に対しState-Trait Anxiety Inventory(日本語版)を用いて

ストレスがどれくらいかかっているのかを測定した研究では、平均特性不安が46.5±9.5,

平均状態不安48.6±8.6であったようです。

高不安状態にある者が,特性不安では全体の約53% 状態不安では全体の約80%を占めており、

多くの女性が強いストレスをうけ不安を抱えながら治療にのぞんでいることがわかります。

状態不安については、正常成人と比較して高くい事がわかっています。

しかもそのレベルは、心身症患者と同程度であったと報告されています。

高度生殖医療あるいは一般不妊治療かの違いによる不安の程度に差はありません。

不妊治療を受ける段階ではかなりストレス度は高まっているといえます。

さらに、高度生殖医療を受けた女性では不妊の原因が自分自身にある場合はさらに

不安状態が高い傾向にあることが示されています。

これらのことからも治療を受ける過程においてはもちろん、

心理面でのフォローアップまたはサポートが必要であることを示唆したと報告しています。

 

ストレス度が高いほど妊娠確率は低下する

頭を抱える女性

長期にわたる慢性的なストレスはより不妊リスクを高めてしまいます。

東海大学病院で、6ヶ月以上不妊治療を受けている女性74人を対象にした

グループでの心理療法やイメージ療法が妊娠率を3倍ほどに伸ばしているという結果があります。

この研究では平均年齢は34歳となっています。

不妊治療をはじめてからの期間は平均で約6年とのこと。

他にもある瞑想やイメージ療法や認知行動療法と合わせたメンタル的な

サポートでも似たような妊娠確率を高める効果が出ているため、

こういったサポートの有効性がうかがえますね。

この研究では、5週にわたり週1回90分のミーティングをひらき、抱えている悩みを語り合うということや、

受精卵が着床するといったイメージ療法をもちい、イメージして思い浮かべたりしています。

不妊治療歴が平均6年経過していても、通常の不妊治療よりも妊娠確率を3倍近く伸ばせている点がすごいことです。

心理的なサポートはいかに女性が心身ともに健康で安心して妊娠していくために必用な

ものなのかという事が理解できますね。

 

そして、通常の不妊治療を受けながら心理療法を受けていない人は妊娠したのが、

37人のうち5人にとどまったのです。

心理療法を受けている場合は、別のグループの37人中は14人は妊娠しています。

 

医療機関で出している妊娠確率の意味を正しく知って

NG 女性

「妊娠率(受精率)が高い」と公表している不妊クリニックを選ぶ傾向がありますので、

結果として受精率の高い顕微授精がされているわけです。

クリニックがホームページ等で「高い妊娠率」を誇っても、冷静に考えれば、

ご自分達の不妊原因の軽い重いに基づいて、妊娠率は0%から100%に分布します。

重要なのは「ご自分達の妊娠率」であり、「クリニックの妊娠率」は無関係なのです。

引用 不妊治療ホントに必要?

 

不妊治療先を選ぶ基準として、有名か、不妊治療の成績が良いのかなど色々な基準も

あると思います。しかし、そのクリニックで見せている治療成績のみに囚われると危険です。

同じタイミング療法であっても、妊娠確率が10%の人と、妊娠確率が30%の人とでは

同じタイミング療法を受けても結果が違ってきます。

治療を受ける側の妊娠確率がどうなのかという点を無視できないです。

そして、不妊治療の妊娠率をみると勘違いがおきてきます。

妊娠した人は体外受精4回までで妊娠していると聞かされれば、4回受ければ妊娠すると勘違いしてしまいます。

しかし、実際は治療を受けたにもかかわらず妊娠していない、出産していないという

割合を省いてしまった統計を見ても意味がありません。

確かに、医療機関によって治療方針すら様々です。医師の間でも意見が割れるものは多々あります。

信頼できる、相談しやすい病院を選ぶことが望ましく、有名であることや確率だけで

決める事はかなり危険だという事を知っていてください。

 

不妊治療の選択と決断は本人たちの意思にゆだねられる

治療をはじめていくと、医師が治療方針や方法を提案したとしても、最終的に

選択して決断していくには、本人の意思にゆだねられます。

そのためとてもプレッシャーを感じますし、悩むところでもあります。

不妊治療が嫌なのにやめられない。終わりが見えやすくなるという事です。

早期に妊娠できたら問題はないでしょう。しかし、そういったケースばかりでもありません。

不妊治療における妊娠確率から考えても、早期に妊娠しないケースの方が圧倒的に多いのです。

その際に、やめるにやめられないという苦しみもでてきます。

その際に治療費がかさみ、高額治療費に今までかけてきた金額を考えると、

辞める事にすら苦しみがともなうという事です。高級車が買えるほどの治療費を

つぎ込んでいる人も少なくはありません。それでもまだ授かればよいでしょう。

でも実際は授からないという人だって多いのです。

 

私は結果的には妊娠・出産したが、妊娠しない可能性だって大いにあった。

もしそうだったら、足繁くクリニックに通って治療を受け続け、そして精神的にもダメージを受け、

加えて財布からは500万円もが飛んでいったのだ。私は妄信的になっていたために続けたが、

治療をあきらめる人もいるだろう。一方でもっと治療費をかけている人だっている。

引用 高級車が買えるほどつぎ込んだ治療費

 

不妊治療は始めやすいけれど、治療を受けていく過程に苦痛がともなう事、さらには

辞め時にも苦労するという事です。そもそも不妊でないケースも多いため、

夫婦でよく話し合ったり、2人の足並みをよくそろえておかないといい妊活にも

不妊治療にもならないため焦って、治療さえすればいいのではと思ってしまうと、

こんなはずではなかったという後悔につながってしまうのです。

 

不妊治療は焦ってしてはいけない

不妊治療は非常に心身共に大変でストレス度が高まる治療です。

期待がかかる分、不安や焦りも募りやすくもなりますし、妊娠できない自分に嫌悪感を

抱き孤独と闘っています。

不妊治療を始める前に本当に取り組めることはないか、

沢山のリスクを抱えて望む治療にもなるという事を知ったうえで、夫婦でよく話し合い

協力し合って進めるものならばせんたくすることが望ましいでしょう。

 

この記事の著者

保健師・看護師

岡田和子

山梨医科大学卒業、看護師・保健師国家資格取得。 NPO法人日本不妊カウンセリング学会所属。
病院や企業にて心と体の健康管理に12年従事した後、不妊カウンセラーとしてパーソナルカウンセリングを行う。

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