AMH(アンチミューラリアンホルモン)が低い 妊娠可能か心配
不妊治療をされると、クリニックで色々な検査をされるかと思いますが、
その検査の中でも、
AMH(アンチミューラリアンホルモン)を測定されてガッカリされていませんか?
AMH(アンチミューラリアンホルモン)とは
AMHとは、アンチミューラリアンホルモン(または抗ミュラー管ホルモン)のことです
発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、
血中AMH値が原始卵胞から発育する前胞状卵胞数を反映するといわれております。
なので、その検査の数値は、
卵巣の中にどれぐらい卵の数が残っているか、
卵巣の予備能がどれほどかを映し出している指標とされています。
ただ、AMHの数値が表すのはあくまでも卵子がどれくらい残っているのか
という事であって、その卵の質がいいか、順調に育つかは一概に言えません。
なのでガッカリする必要はありません。
ただ、残されている卵子の数が多い方が妊娠しやすいという傾向はどうしてもありますが・・・。
そして、卵の質や発育の良さは年齢によく相関すると言われていますが、
高齢であっても、自然妊娠されている方もいますし、
不妊治療後に自然妊娠されている方もいらっしゃいます。
卵子の老化は実年齢に比例はしますが、できるだけ卵子の数を温存するように
卵子の劣化を防ぐような生活を心がけていきましょう。
希望をもって、妊活していただく方が赤ちゃんは授かりやすいでしょう。
AMH=妊娠率ではありません
誤解されやすいのが、AMH値が低いと妊娠できないと思われる。
妊娠率も低くなると思われがちということです。
AMH値を測っていないからわからないだけで、
実はほとんどゼロに近い数値でも自然に妊娠・出産しているという人はたくさんいます。
クライアント様の中でもAMH値がゼロでも、
治療とあわせて、妊娠・出産されてたという方もいらっしゃいます。
この値は、できるだけ妊娠可能な期間に限りがあるから急いでねのサインという事で
とらえ、できる事に取り組んでいきましょう。
AMHが低いと早期閉経になってしまうの?
Nurses’ Health Study II の前向き症例対照研究報告では、1996-1999年に血清AMH値を測定した
32~44歳の女性を対象に2011年までフォローするという長期間の追跡調査を行っています。
AMH低値が45歳未満の閉経と関わるかというもので、
この研究で分かった点は、
AMH値が0.10 ng/ml低いと、45歳未満の閉経リスクが14%高まったという事、
AMH値2.00ng/mlの女性と比べると、45歳未満閉経リスクはAMH値1.50ng/mlの女性では2.6倍、
AMH値1.00ng/mlの女性では7.5倍、AMH値0.50ng/mlの女性では23倍高かった。
AMH値は35歳以下の女性に対する45歳未満閉経・予測因子としては精度が落ちたものの、
42歳の女性に対してはかなり高精度であるという点から、
AMHが低い場合は早期閉経のリスクが高まるという事から、
妊娠できるまでの期間に限りが出てくる可能性の高さがうかがえます。
不妊治療特に体外受精を急いで
できるだけ治療できる期間も限られる中なので、治療している時間も無駄にはできません。
AMHが低い場合は流産率も高まります。
ゆっくりと原因を探しているというよりは、体外受精を急ぐという事も
ポイントになるかもしれません。
原因を探しているうちにあっという間に時間は過ぎてしまいますが、
治療をしていられる期間にも限りがあるという事です。
またその不妊治療だけが全てでもなく自然妊娠できる可能性もありますので、
治療で妊娠しなかったら自然妊娠は無理という意味でもありませんが、
受精までのトラブルが起きていた場合はその部分は生殖医療のサポートによって
妊娠率を高める事もできます。
ただ期間に限りがあるという目安としてAMHはとらえて、
ゆっくりタイミング合わせをというよりは、ジャンプアップなども視野に入れたり、
卵子の質を高めていくのは抗酸化作用を高める、酸化ストレスにさらされない生活
という事になっていくのでできる事はまだまだあります。
また不妊治療を始めていくとストレス度が高まる傾向があります。
妊娠できるとそのストレス度は改善される傾向があるのですが、
結果が出ないとより落ち込んだりもしてしまうので、精神的なサポートの必要性も指摘されています。
AMHが低いと体外受精の流産率も高まる
AMHの値と体外受精での流産率との関係を調べた研究(1)より、
AMHの値を3つのグループに分けて比較しています。
AMH低値は0.08–1.60 ng/mL、中間値は1.61–5.59 ng/mL、高値は5.60–35.00 ng/mL となっています。
33歳未満の女性での流産率は三つのグループで差はありませんでした。
ところが、34-36 歳の女性ではAMH低値群33%、中間値群15%、高値群17%と、AMH低値群で他の2群より流産率が高く、
37歳以上の女性ではAMH低値群35%、中間値群26%、高値群18%で、AMHが低いとり流産率が高まる
傾向がでています。
34歳以上ではAMHの値が1.60ng/mLでは、流産率が高くなっています。
より、精神的なサポートも必要になっていくと言えるでしょう。
AMHと体外受精での累積妊娠率は変わってくるの?
AMHは卵子の数のを反映していて、卵子の質さえ良ければ妊娠できるとされていますが、
それでもAMHが多い方が妊娠率は高まるものなのかも気になりますよね。
AMHの数と累積妊娠率は年齢によっても影響度が違うようです。
卵子の老化、女性の年齢が関係するものの、
同じ年齢であっても妊娠率が違うというのもありますよね。AMHはどう影響してくるのか
2000年1月から2013年12月の間、大学付属クリニックで行われた分析研究をもとに見てみましょう(2)。
体外受精を受けた38歳以上の不妊女性4570人を対象に一度に得られた採卵数と累積での出産率との関係性を
しらべています。
累積出産率については41歳までの高齢の繁殖期の女性に回収される卵母細胞の数とともに増加しました。
41歳まではAMHが高いことで累積妊娠率が高まっています。
ただ、44歳以上の女性では付加価値が最小限でとなり、41歳以上ではAMHの影響がないという結果です。
累積妊娠率については、38〜39歳で25.9% 40-41歳で16.4%、
42-43歳で7%、44歳から1.2%という結果でした。
刺激してたくさん採卵した方が妊娠率は高まる?
AMHが直接の妊娠率を示すものではないものの、海外では刺激をし
採卵数を増やし妊娠率を高めているという点も日本との違いもあるようです。
海外のデータなのでどこまで有効か、また日本人に有効化はわからない点もありますが、
ある程度採卵できると妊娠率も高まる傾向はあるのでしょう。
生産率という点を考えると、できるだけ多く刺激をして、多くの卵子を得ることだと言われています。
約15000周期の他施設間共同研究(3)によって
得られた採卵数と生産率の相関関係を解析した研究では、2年間追跡的に調査をし、
生存累積累積率は、採卵数とともに着実に増加し、25個の採卵数のときに70%に達したということです。
最も生産率に関係したのが25個の採卵数だったという事ですね。
やはりたくさん刺激して得られる卵子が多いというのも重要になるのかもしれません。
ただ、高刺激の場合は、治療の副作用もあるため、治療については医師と相談していくのがベストでしょう。
卵子の数、残された卵子のもとになる細胞の数だけに限らず
妊娠しやすさに向けた取り組みをおこなっていきましょう。
AMHが低くても年齢によって出産率は高い
AMHだけが妊娠に影響するのではなく、たとえAMHが1.2以下で低値でも、
年齢が若いという点でも出産率は高いという結果が出ています。
ただAMHの値だけで一喜一憂する必要性はなさそうです。
そして、年齢も高いしと思われる方でも、全く妊娠できないというわけでもありません。
2011〜2014年にオランダの多施設共同研究OPTIMISTスタディに登録した44歳未満の1515名の女性の中で、
妊孕性の低下が予測され初回体外受精を実施する551名を対象に、
POSEIDON分類を用いて妊娠成績を前方視的に検討しました研究(4)をみてみましょう。
POSEIDON分類(Patient-Oriented Strategies Encompassing IndividualizeD Oocyte Number)は、
体外受精実施の際に妊孕性の低下が予測される方を細かく分類していて、出産率は以下の通りでした。
POSEIDON 1群:35歳未満、AFC 5以上あるいはAMH 1.2以上
1a群:卵巣刺激での採卵数3個以下 (63〜66%)
1b群:卵巣刺激での採卵数4〜9個 (67〜69%)
POSEIDON 2群:35歳以上、AFC 5以上あるいはAMH 1.2以上
2a群:卵巣刺激での採卵数3個以下 (41〜42%)
2b群:卵巣刺激での採卵数4〜9個 (52〜55%)
POSEIDON 3群:35歳未満、AFC 5未満あるいはAMH 1.2未満 (58〜60%)
POSEIDON 4群:35歳以上、AFC 5未満あるいはAMH 1.2未満 (37〜41%)
出産率に影響するのが、年齢と、卵巣の反応採卵数という事なので、AMHの値だけでは
妊娠したり、出産できるのかという点は判断ができないですね。
不安になりすぎたり、逆に高いからといって安心できるばかりでもない検査値です。
AMHに関連する因子とは?
癌にかかっていない閉経前の女性のAMHと将来の癌になるリスクを調べた研究では、
平均AMH 1.00、平均年齢 40.9歳の671名が対象でした。(5)
生活習慣とAMHの関連について横断調査により検討した結果、
AMHは年齢と共に低下し、AMH低値との有意な関連を認めた項目については、
初潮年齢が若い(12歳未満)、ピル使用中(約1/3に低下)であり、
人種、BMI、学歴、身長、喫煙、妊娠歴、月経周期とAMHの関連はなかったようです。
初潮年齢が早かったことや、ピルの使用がAMH低下に関連があり、
初潮年齢の早まりについては、肥満やBMIなども関係があり(6)、食生活をはじめ
生活習慣の影響もあるため、振り返ってみるとよいでしょう。
特別多く増やせる検査項目ではないため、今ある卵子の質が高まるようにできる最善の
生活習慣を心がけたいですね。
そして、子どもの肥満は将来の不妊リスクにもなっています。
今、整えた生活習慣を子供を授かったらそのまま親から子へと受け継がれていくものになるため、
命のリレーをうまくつないでいくためにも長い視点でとらえた妊活ができるといいですね。
参考文献
Bertone-Johnson ER et al., Anti-Müllerian hormone levels and incidence of early natural menopause in a prospective study. Hum Reprod. 2018 Apr 5. doi: 10.1093/humrep/dey077.
1Tarasconi B et al., Serum antimüllerian hormone levels are independently related to miscarriage rates after in vitro fertilization-embryo transfer. Fertil Steril. 2017;108:518-24.
2Cumulative live birth rates and number of oocytes retrieved in women of advanced age. A single centre analysis including 4500 women ≥38 years old Marta Devesa et al.,Hum Reprod. 2018 Nov 1;33()
3Cumulative live birth rates according to the number of oocytes retrieved after the first ovarian stimulation for in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection: a multicenter multinational analysis including ∼15,000 womenNikolaos P. Polyzos et al.,Fertil Steril. 2018 Sep;110(4):661-670.e1
4Hum Reprod 2019; 34: 1030 doi: 10.1093/humrep/dez051
5Fertil Steril 2017; 107: 1012
6Fertil Steril 2019; 111: 122 doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.09.007