不妊の原因にもなる子宮内膜症・チョコレート嚢胞とは

「チョコレート嚢胞」という病気をご存知でしょうか?診断されて、
初めてその病名を知ったという人も多いかと思います。
チョコレートという響きで、甘いお菓子をついつい連想してしまいますよね。
しかし、チョコレート嚢胞は、実際には不妊症の原因になったり、卵巣癌の引き金になる可能性がある疾患です。
チョコレート嚢胞の原因、症状、治療法などについてみていきましょう。
チョコレート嚢胞とは?
子宮内膜は、本来、受精卵の着床に備えていますが、妊娠が成立しないと、
膣から出血となり排出されます。これが、月経です。
子宮内膜症とは、子宮の内側だけに存在するはずの、
子宮内膜が、子宮以外の場所に異所的に存在し、増殖してしまう病気です。
では、チョコレート嚢胞とはどんな疾患でしょうか。
「チョコレート嚢胞」とは卵巣の内部に発生する子宮内膜症のことをいいます。
子宮内膜に似た組織が卵巣の内部で増殖・出血を繰り返してしまいます。
この出血が卵巣内で溜まってしまい、嚢胞と呼ばれるふくろ状の組織になってしまうのです。
溜まった血液は時間が経つにつれ、チョコレートのような茶褐色のどろどろした形状になります。
この形状からチョコレート嚢胞という名前が付いています。
チョコレート嚢胞の症状はどんなもの?
①疼痛
・ひどい生理痛
・排便痛
・性交痛
・腰痛
・慢性的な下腹部痛
チョコレート嚢胞は子宮内膜症と同様に、生理の度に生理痛や、上記に挙げた疼痛が悪化していくという特徴があります。
さらに、その痛みは他の部位に発症する子宮内膜症よりも強い痛みであると言われています。
②不妊
そもそも、子宮内膜症となると、炎症によって起こった癒着が卵管に波及すると、
卵管が閉塞するので、受精卵が子宮に到達できなくなります。
チョコレート嚢胞は、嚢胞によって卵巣内の血流が阻害されたり、
組織の癒着で炎症を起こしたりすることによって、排卵障害が起こることがあり、それが不妊の原因となります。
チョコレート嚢胞がすぐに不妊症を引き起こすわけではありません。
しかし、放置しておくと不妊のリスクが高まってしまいます。
不妊症の原因を調べていたらチョコレート嚢胞だったという場合もあります。
痛みの自覚症状が強いチョコレート嚢胞は、比較的早い段階で気づくことができます。
月経時の痛みが今までよりも酷くなったという場合は早めに受診をしましょう。
チョコレート嚢胞の治療とは?
チョコレート嚢胞を含む、子宮内膜症の治療は大きく分類して、2つの治療法があります。
薬物療法と手術療法です。
どの治療を行うかは、症状、年齢、今後の妊娠・出産の希望などを総合的に判断して決定してきます。
薬物療法
薬物療法では、嚢胞が小さく、リスクが高くなければ、低用量ピルを服用したり、
エストロゲンの分泌を抑えるホルモン剤などを投与したりして、病気の進行を止める方法もあります。
・低用量ピル
一般には避妊薬として知られるが、子宮内膜が厚くなることを抑え、
子宮内で生産されるプロスタグランジン(子宮を収縮させ、不要になった粘膜・血液を体外に排出するのを助ける)を減少させる効果がある。
つまり低用量ピルは嚢胞の増殖、痛みを抑える働きをする。
・プロゲスチン経口剤
人工的に合成された黄体ホルモン作用を持つ物質を用いた薬。これにより排卵抑制効果が得られる。
アンドロゲン(男性ホルモンと呼ばれる)作用を抑えた新世代の「ジエノゲスト」が使われることが多い。
また、激しい生理痛を抑えるのには、鎮痛薬のNSAIDsや漢方薬が使われます。
手術療法
チョコレート嚢胞が不妊の原因になっていたり、骨盤痛などの症状が強かったりする場合は、手術の対象となります。
その他にも、チョコレート嚢胞が大きい場合や、高齢の場合には、
チョコレート嚢胞が悪性化して卵巣癌になることがあるため、手術が行われます。
手術は、開腹や腹腔鏡を用いたもので、嚢胞がある部位だけ摘出したり、癒着部位を剥離したりします。
悪性が強く疑われる場合や、重症で、症状が完全に消えることを目的とする場合には、
卵巣、卵管、子宮を切除してしまう場合もあります。
チョコレート嚢胞は癌化するの?
チョコレート嚢胞のほとんどは良性です。しかし、チョコレート嚢胞は、0.7%にがん化するといわれており、
年齢が高くなるほど、また嚢胞が大きくなるほどそのリスクは高くなります。
40歳以上の方、嚢胞の大きさが4cm以上の方は注意が必要といわれています。
癌化した場合には転移を防ぐために卵巣そのものを摘出する手術を行わなければなりません。
今後の妊娠・出産を希望する人は医師ともよく相談した上で治療方法を検討する必要があります。
まとめ
チョコレート嚢胞の症状、治療方法などについてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。
チョコレート嚢胞は放置しておくと、不妊の原因となるだけでなく、
ガン化してしまう可能性のある病気です。チョコレート嚢胞は疼痛の症状も強く、
エコー等でも比較的診断のつきやすい疾患です。月経毎に月経痛が強くなる場合は、
我慢せずに早めに受診して、早期発見、治療につながるようにしていきましょう。