妊活女性の着床しやすくするビタミンD濃度を高める方法

妊活女性の着床しやすくするビタミンD濃度を高める方法

着床をしやすくするのにかかわる栄養としてビタミンDがあります。

ビタミンDは脂溶性のビタミンで、食べ物からとるほかに、

日光を浴びると私たちの体の中で作り出すことができる栄養素でもあります。

現代では約半数近くがビタミンD不足とも言われています。

しっかりと補って着床・妊娠しやすくなっていきたいですね。

太陽に素肌をさらすと皮膚がんになるなんて言われて美容のため、健康のためと…

長い間、世界の常識とされてきた日焼けと健康の関係性が今は見直されています。

そしてその日焼けによるリスクより太陽光を浴びない健康リスクのほうがはるかに高いことが、

2018年12月に国際環境衛生学会誌で明示されています。そしてそれが妊娠しやすさにも影響が出ている

部分が大きい点もあります。みていきましょう。

 

着床しやすく働くビタミンD

少し前はIU(アイユー)という国際単位で示されましたが、

現在はμg(マイクログラム)で表されています。1μg=40IUです。

日本人の食事摂取基準(2015年版)では、

成人男女のビタミンD摂取目安量を5.5µg/日(妊婦は7.0µg/日)、耐容上限量を100µg/日としています。

 

そしかし、米国食品栄養委員会では「ビタミンDは400〜800IUを摂ろう!」と言っています。

そしてさらに、2000年頃よりビタミンDの研究は過去にでた108の論文と1400人のデータを

解析した研究(1)では、最適なビタミンDの量を計算すると以下のようにしています。

 

  • 普通体型の人(BMIが18.5〜24.9)は 3,094 IU/日 77µg/日
  • 太りぎみの人(BMIが25.0〜29.9)は1日に4,450 IU/日 111µg/日
  • 肥満の人(BMIが30以上)は1日に7,248 IU/日 181µg/日

 

かなりの量が必要という事です。

デスクワークをしている人はほとんどがビタミンD不足に陥っているといわれていますから、

かなり気をつけてビタミンDを摂取したり太陽光を浴びていきたいところです。

1日に10,000IUを超えてくると、体に害が出てくるそうなので

サプリなどでの摂取をしていなければ、ビタミンDのとり過ぎについては心配しなくてよさそうです。

 

ビタミンDの妊娠に関わる重要な役割

  • 細胞に増殖するよう命令を出す:細胞の入れ替えに使われるためとても重要
  • 免疫システムを正常に保つ:ビタミンDが足りないと免疫バランスが崩れ着床の妨げに
  • メンタルと脳の働きに必用:脳機能を向上させ、精神的にストレス対処ができる様にもなります。うつなどとも関連します。

 

 

現代のライフスタイルでは、太陽の光を浴びる事が随分と減った生活です。

慢性的なビタミンD不足に陥ってしまっているため

サプリなどで補う事もよいのかもしれません。

2016年には「太陽の光を避けるのはタバコと同じぐらい体に悪い」との報告がスウェーデンから出ています。

また妊活ではリラックスできるような自律神経の中でも副交感神経が優位になるような

心と体がゆるむ状況がとても大切です。ビタミンD不足とセロトニン不足メラトニン不足にも関係があり、

妊娠しやすさにはとっても重要な栄養素と言えるでしょう。

また、ビタミンD不足を解消することで、心疾患やがん、糖尿病などの発症率も低下しています( 2 3 4

メラトニンを増やして卵子の数と質の改善を

 

まだまだある妊娠しやすさに関わるビタミンD

太陽光には体内時計をリセットする効果があるため、睡眠の質にも大きな影響をあたえています。

また体内時計の影響を受けるのはホルモンバランスでもあります。

  1. 目から太陽光が入る事
  2. 太陽光が脳の視交叉上核を刺激する事
  3. 体内時計が正常化に

日中にどれだけ目から太陽光を入れているのかが、体内時計をコントロールするカギになっています(5)。

体内時計の正常化によってメラトニン濃度が高まり、睡眠の質も高まります(6)。

太陽光を日中に浴びていると自然と夜は早く寝つくようになり、自然と早寝早起きの

リズムが作れるようになっていくのかもしれませんね。

睡眠の質やメラトニンと妊娠確率についても報告されています。

山口大学医学部産婦人科の杉野教授らは、

メラトニンの抗酸化作用に注目し、卵胞液中のメラトニン濃度と卵の質について、

さまざまな基礎研究や臨床試験の結果を発表しています。

 

研究からみたビタミンD濃度と妊娠率

Polyzos NP et al. Vitamin D deficiency and pregnancy rates in women undergoing single embryo,

blastocyst stage, transfer (SET) for IVF/ICSI. Hum Reprod. 2014 Sep;29(9):2032-40.

では胚盤胞(5日齢)1個移植を行った368名の体外受精患者さんを対象に調査したところ、

血中 25(OH)ビタミンD 濃度が<20 ng/ ml以下の群ではそれ以上の群に比べて、妊娠率が低かった(41 vs. 54%)

とされています。

 

Ozkan S et al.  Replete vitamin D stores predict reproductive success following IVF. Fertil Steril. 2010 Sep;94(4):1314-9.

では、84名の体外受精症例で卵胞液中の 25(OH)ビタミンD が高いと妊娠率も上昇した。

解析により卵胞液中のビタミンD濃度が体外受精の成功を予知出来る一つの要因であることが分かったと

結論付けています。

 

Chu J et al. Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis. Hum Reprod. 2018; 33: 65-80.

体外受精とビタミンDに関する11論文2700名のデータを基にメタ解析を行っています。

ビタミンD濃度は血清中の25-hydroxyvitamin D [25(OH)D]を指標に、

ビタミンD摂取が『十分(>30 ng/ml)な群』と、『不十分(20-30 ng/ml)あるいは不足(<20 ng/ml)群』の2群に分けて、

妊娠成績の比較を行っています。その結果、ビタミンD摂取が『不十分/不足している群』に比べてて

『十分な群』では出産率が1.33倍も高まったようです。

 

ビタミンDの摂取や日光浴の必要性

ビタミンDの濃度が充分に足りていることも着床しやすさに影響があるようです。

このビタミンDは食事から補う事も出来れば、日光浴によって体内で作り出すことも

できる栄養素です。厚生労働省の調査によると、食品からとるビタミンDの必要量の目安は5.5µg程度とされています。

1日に必要なビタミンDの量は15µg以上とされていて、不足する10µgのビタミンDは、

太陽光線を浴びて体内で生成する必要があります。

 

食事からの摂取

魚介類やキノコ類、卵類などに多く含まれています。

ビタミンDは脂溶性ビタミンであるため、脂質を含む動物性食品から摂取したほうが

栄養が吸収されやすくなります。

 

日光浴・太陽を浴びる事で体内で生成

皮膚が紫外線を浴びることでビタミンDの素を生成します。

長時間の日光浴は皮膚がんへのリスクも高まるため好ましくありませんが、

UVケアをしてしまうとこの紫外線を浴びることの妨げになります。

 

美肌ブームによる過剰なUVケアにより、特に夏場は女性を中心に極端に紫外線を避ける傾向がある。

その結果、ビタミンDの体内産生量が減少しビタミンD不足に陥るリスクが上昇する。

引用 過剰なUVケアがビタミンD不足

 

そのため、紫外線の量は季節や場所、時間帯によって変動し、皮膚のタイプによっても変わりますが、

1日に必要な日光照射時間は、夏であれば15~30分程度、冬なら1時間程度です。

また、ビタミンD生成に必要な日照時間は地域や季節によっても随分違います。

そのため、地球環境研究センターのサイトではビタミンD生成に必要な日照時間と、

必要以上にあたりすぎては危険となる時間数も教えてくれます。

デスクワークがメインというライフスタイルではもっともビタミンDの生産量が多くなるという

正午の時間に太陽光を浴びるといった工夫をしましょう。

まとまった時間を日光浴に割くよりも、こまめに数分の日光浴をくり返したほうが

ビタミンDの生産量は多くなるため、通勤はできるだけ太陽光を浴びたり休憩時間には

日光浴を兼ねた外気浴なども効果的と知っておいてくださいね。

 

ビタミンD摂取でメンタルも改善アンチエイジング効果も

カーシャーン大学の実験で、中程度のうつ病に苦しむ18〜65才の男女40名を対象にした研究(7)ですが

1週間で50,000IUのビタミンDを8週間飲む郡となにも飲まない郡とで比較

1週間で50,000IUというと、1日に7,000IUちょっとの摂取なのでかなりの量。

その後、全員テストをして以下をチェックした結果、ビタミンD摂取郡には以下の変化がありました。

  • うつ病レベル→32%軽減
  • インスリン抵抗性(糖尿病のリスクがわかる)→28%改善
  • 体の抗酸化能力(活性酸素を処理する機能で老化防止に)→24%向上
  • グルタチオンレベル(強い抗酸化作用を持ちアンチエイジングに)→24%向上

 

ビタミンDによって心身ともにかなり健康的になる事がうかがえます。

いくら40代50代は妊娠しにくいと言っても、体外受精が始まる以前の方が

今よりも10倍近く出産数もあったのが昔の時代です。

今のライフスタイルとは違い、外で体を動かし太陽光を浴びる生活をおくっていました。

そういった点で卵子が比較的要状態で維持されていたという点もあったのでしょうね。

 

ビタミンDには血管を新たに作り出す作用も

太陽の光を浴びていないと、どれだけサプリで補おうとしても足りない部分をリカバーできないと

いわれています(8)。エディンバラ大学の皮膚病学者リチャード・ウェラー博士は

日焼けによって皮膚がんになるリスクは思った以上に低く、

治療も容易にできる。太陽光を浴びている人は、平均的な寿命も長く、

皮膚がん患者の寿命は長いといいます。日光浴の良い影響はビタミンDにもありますが、

一酸化窒素も重要な役果たしていると言います。

血流を向上させるのと、新しい血管を作る作用もあって、心疾患のリスクを大幅に低下させています。

なるほど、ビタミンDや太陽光にあたっていることで、血流がよくなる、

新しい血管も作り出す能力が優れているというのは、確かに着床に関わるのも納得ですね。

 

太陽光を避けると喫煙よりも悪影響

スウェーデンでの研究では3万人女性を対象に行われた日光浴のメリットに関する調査でも、

日焼けを避けているグループは積極的に太陽を浴びているグループと比較して死に至る病気の発症割合が

倍増するとしています。さらに、日焼け止めの使用が皮膚がんを予防するという有効な根拠(9

もほとんどなくないと言われています。

今まで何のために女性は一生懸命日焼け予防をして美白美肌にこだわってきたのでしょう。

確かに肌が白くてキレイとても魅力的ですが、妊娠できない重要な栄養が足りない上に

不健康になってしまっては手間もお金もかけてそちらの方がデメリットが多かったら

やめた方がよい事の一つと言えるでしょう。

これらの調査結果を見ても、日光に当たらないことのほうが皮膚がんを含む他の

老化劣化、病気の誘発につながってしまっています。

29518人の女性を20年間追跡調査した2016年のスウェーデンの研究発表(10)では、

日焼けを避けているグループは積極的に日光に当たるグループと比べ、0.6~2.1年寿命が短いと判明して

います。さらに興味深いのが、日光浴派の喫煙者と日光を避ける非喫煙者の平均寿命が

ほぼ同じといわれています。太陽を浴びないというのはタバコを吸うのと同等レベルなのです。

妊活だったら真っ先にタバコはよくないと禁煙を考えまるよね。

でも、これほど太陽光を浴びる事の重要性は意識していないかもしれないですよね。

 

今からできるビタミンDの不足を防ぐ工夫

顔と両手だけでなく、両腕や足などの部分に太陽光を当てると、

照射面積がひろがるため、必要なビタミンD量に対する照射時間は半分になります。

ビタミンDは6種類あり、そのうち体に必要となるのが、ビタミンD2とビタミンD3です。

妊娠を望む女性にとって必要な栄養を多く含む魚類には、このビタミンD3も豊富に含まれています。

魚を食べることで、ビタミンDを体内に取り入れ補えますが、

魚類を十分に摂取しないといったことや、必要以上に紫外線を避けていると、ビタミンDの濃度は

低下してしまいます。紫外線は有害になる部分もあるため、必要以上に

極端に避けている場合はとくに注意が必要となります。

日光浴や紫外線と上手に付き合い、食事からのビタミンD摂取の

不足が起こらないように工夫をしていきましょう。

また、窓越しの日光浴では必要な紫外線を浴びることができません。

外に出て、活動することが望ましく、より自然に触れる活動が自然と妊娠に近づいていくのですね。

 

サプリの摂取での注意点

栄養不足かもしれないと、それを補うためにサプリの摂取に飛びつくのはやはり

考え物です。長い歴史をみてきても生殖についてこれほどサプリに頼りすぎる時代は

ないのではないでしょうか。もともとの食事からの摂取と、

太陽を浴び屋外活動することもビタミンDの為だけでなく他の要因も含め

複雑に影響し合って、妊娠しやすさにつながっている事でしょう。

まずは、基本の生活習慣の見直し、食生活や日光を浴びる生活を見直してみましょう。

多量のビタミンD摂取を続けると高カルシウム血症や腎障害などが起こる可能性が知られています。

通常の生活をしていれば過剰摂取という事はおこりません。

サプリメントによるビタミンD補充をする場合においては、有害にもなります。

摂取量や摂取についても気をつけていきたいところです。

厚生労働省の発表では、ビタミンD毒性の原因はほぼ例外なくサプリメントの過剰摂取としていますし、

吸収率からすると、太陽光を浴びるのに勝るものはありません。

ビタミンDサプリを摂取しているのに効果が出にくかった原因として、

マグネシウムの摂取量の不足だったという事も言われています。(11)

基本的な食事スタイルの見直しも忘れないでくださいね。その際は、地中海式食事療法を参考に

してみましょう。

 

ビタミンD不足は不育症にも?

ビタミンDと不育症(反復流産)に関する研究(12)では、

反復流産の方は、有意なビタミンD不足(<30 ng/mL)を認めています。

しかし、ランダム化試験ではビタミンD投与による有意な改善効果は示されていません。

ただ、一方で、ビタミンDによる免疫調節作用の関与が示唆されていて、

反復流産の方は、胎盤および脱落膜のビタミンD受容体(CYP27B1)の発現が低下していて

ビタミンD不足による胎盤形成不全を示しています。

ビタミンDには抗炎症作用、抗菌作用、胎盤形成作用があることが明らかにされているため、

妊娠まえから妊娠中もビタミンD不足は避ける様にしたいですね。

 

ビタミンDサプリで不育症が改善?

中国の研究(13)では、2014〜2016年に連続2回以上の流産を繰り返した方99名を対象に、

25ヒドロキシビタミンD濃度とCD19+B細胞、NK活性、Th1サイトカイン(IFNγ、TNFα)との関連を検討しています。

不育症(習慣流産、反復流産)では、CD19+B細胞増加、NK活性増加、IFNγ増加、TNFα増加などの

免疫系の異常が生じると考えられています。

一方で、ビタミンDは免疫系の調節役として重要であることが明らかとなってきています。

ビタミンDはT細胞の分化増殖を抑制し、CD8T細胞の細胞傷害性を抑制し、

Th1からTh2へのサイトカインシフト促進、B細胞の増殖を抑制、IgG分泌抑制します。

これらの変化は、不育症でみられる免疫異常を整えてくれるする方向に働いてくれています。

このような背景のもとに、この研究が行われ、ビタミンD濃度が減少すると、

流産の方向に免疫のバランスは傾いたのです。

そして、ビタミンDサプリメントによりそれが改善することを示したのです。

妊活サプリにおいては、他のビタミン系のサプリなどよりビタミンDサプリが最も効果的であり、

価格と費用対効果、そして長期飲んだ際の安全性もエビデンスがあるので、おススメと言えそうです。

 

 

参考文献

紫外線情報分布図(気象庁)
ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報(地球環境研究センター)
有害紫外線モリタリングネットワーク(国立環境研究所)

公益社団法人骨粗しょう症財団

超ストレス解消法 鈴木裕

Polyzos NP et al. Vitamin D deficiency and pregnancy rates in women undergoing single embryo, blastocyst stage, transfer (SET) for IVF/ICSI. Hum Reprod. 2014 Sep;29(9):2032-40.

Ozkan S et al.  Replete vitamin D stores predict reproductive success following IVF. Fertil Steril. 2010 Sep;94(4):1314-9.

Chu J et al. Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis. Hum Reprod. 2018; 33: 65-80.

Am J Reprod Immunol 2018; 80: e13022 doi: 10.1111/aji.13022

Am J Reprod Immunol 2016; 76: 432

この記事の著者

保健師・看護師

岡田和子

山梨医科大学卒業、看護師・保健師国家資格取得。 NPO法人日本不妊カウンセリング学会所属。
病院や企業にて心と体の健康管理に12年従事した後、不妊カウンセラーとしてパーソナルカウンセリングを行う。

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