男性不妊 精子の質が低下しやすい人の習慣と特徴

男性不妊 精子の質が低下しやすい人の習慣と特徴

男性不妊の原因は様々ありますが、90%ほどを占めるのが造精機能障害です。

精子をつくり出す機能そのものに問題があるため、精子をうまくつくれない状態です。

精巣や内分泌系(ホルモン分泌等)の異常によって問題をひき起こしてきます。

妊娠には精子の質の良さというものも影響してくるためどういったことが精子の質を

低下させ劣化させてしまうのか、男性不妊になりやすい人の特徴をみていきましょう。

 

男性不妊の原因とは

男性不妊の原因には生まれながらにしての先天性のものと、産まれてきてから後の生活習慣など

後天的な影響によって妊娠しにくくさせてしまう原因となるものとあります。

先天性の男性不妊の原因には、さまざまな遺伝的な要因や、

発育段階や女性経験などで受けた影響やトラウマなどにより性機能不全になるものです。

性機能不全には、勃起障害(ED)・早漏・射精障害・遅漏などがあります。

また、後天性の原因については生活習慣などの影響が大きく、

ストレス、アルコール、睡眠不足、運動不足、喫煙、肥満・糖尿病、病気や薬の影響、

精巣の損傷もしくは機能障害など多岐にわたります。

 

男性の精子の質は個人差があり変化しやすい

寝る男性

14カ国4500人の男性を対象に精液検査を行い研究論文として発表された

2010年のHuman Reproduction Update誌に掲載された

“World Health Organization reference values for human semen characteristics”

(ヒト精液所見におけるWHO参照基準値)という論文をもとに、

WHOでは精液検査の所見の基準値を発表しています。

しかし、こちらの基準最低ラインという意味合いで基準を満たしていれば自然妊娠

できるというものではありませんし、状態によって精子の質というのは非常に変化

しやすいものでもあり、良い状態を保てるようにしていくことが妊娠には

必用と言えるでしょう。

 

同じ人で何回か検査すると所見ではばらつきが大きく、精液の検査は、

実は不安定で不正確なものなのです。WHOでも1ml当たり2000万以上で

運動精子率50%という数値を出していますが、

正常値としないようにと断り書きをつけています。

引用:浅田レディースクリニック

 

不妊のもと精子の質を低下させる 酸化ストレス

精子の質を下げるというのは劣化・老化とも表現できます。

不妊症の男性は酸化ストレスを受けた精子の割合が多いといわれています。

そして、体外受精などの高度の生殖医療の結果にも影響するといわれています。

そのため、細胞が劣化し老化しているほど、高度な生殖医療をもってしても妊娠しにくく、

結果が出にくいという相関関係があります。

1943年に「酸化ストレスが精子にダメージを与える」という論文が発表され、

それ以降多くの研究で、精子が活性酸素に弱いという研究結果が発表されています。

そのため、精子の劣化を防止するためには、抗酸化物質を多く摂取することが重要であることも、

多くの研究で明らかになってきました。

精子の酸化は、精巣を出た時からだといわれています。

そのため、射精されたときからではなく、すでに製造され精巣から精巣上体へと移動したときから

劣化と老化が始まりだしています。

 

生活習慣から見た不妊になりやすい人の特徴

夫婦食事つくる

酸化ストレスによって精子の質は劣化していきます。

日常的に影響を受ける、食べ物、タバコ、大気汚染、紫外線や放射線、ストレスや過度な運動などからです。

特に、精神的なストレスは不妊の悩みを抱えると深刻化しやすく、

また夫婦だけど性も関わるから、本音で相談しにくくなあっていってしまう難しさもありますよね。

 

喫煙・たばこの煙

タバコによる害は吸っている人だけに限らず、副流煙からも害を受けます。

まさに百害あって一利なし。喫煙者は非喫煙者に比べて精子量が10~17%減少、

精子の運動量減少などという結果も出ています。

 

飲酒・アルコール

イタリアのRicci氏らによって2016年のReproductive Biomedicine Onlineに掲載された

アルコールと精子の関係についての研究では、

アルコール摂取は精液量と正常形態率(特にこれ)に悪影響を与えるとされています。

時々飲むくらいならそれ程影響はないものの、多量飲酒や毎日の飲酒は好ましくありません。

 

コレステロールの摂取不足

コレステロールと聞くとかえっ不健康というイメージがあるかもしれません。

そのためコレステロール0、無脂肪などが健康的と選ばれがちですが、

厚生労働省でも見直しがされ、今ではちゃんとコレステロール摂取が促されています。

コレステロールはホルモンの素となり、不足すると、男性ホルモンの分泌に

影響がでて男性の場合は精子が未熟になってしまいます。

不妊症の人には、やせている、肉をあまり食べないなど低コレステロールの傾向もみられます。

 

野菜や栄養・ビタミン不足

食生活の乱れによっておこる精子の質への影響。精子は活性酸素の攻撃を受け

劣化・老化していくため、活性酸素に対抗するビタミンが不足することも不妊の原因となります。

また、活性酸素を消去する働きのある抗酸化ビタミンを緑黄色野菜や果物から積極的にとる事も

気をつけていくとよいでしょう。ビタミンEの化学名は、「子供を生ませる」という意味である

「トコフェロール」という異名があります。ビタミンEは脂質を主成分とする

細胞膜内にとどまって酸化を防いでくれますし、ビタミンCは細胞内で活性酸素を消す働きをします。

野菜や果物などを摂取することがよいでしょう。2013年に発表された米国の論文では、

トマトに多いリコピンの摂取量の増加と共に、正常な形状の精子が有意に増加したということもあります。

 

プラスチック製品 フタル酸を減らす

フタル酸とはプラスチックの容器を柔らかくするために使用される物質ですであり、

これに暴露されると、精子のDNA断片化率が高まってしまいます。

食品のプラスチック容器への接触を減らすなどの対策が有効になります。

特にプラスチックから微量でもとけでる環境ホルモンは微量なのに

有害な影響をもたらしてくるようです。

 

肥満とやせ

体脂肪の割合によっても性ホルモンの分泌にも影響が出るため肥満や痩せすぎというのは

男性でも影響がでてきます。肥満の程度を示す数値であるBMIでは、その値が基準値を超え

高いほど正常な精子数や精子の量が少なかったという実験の結果もあります。

その原因には、精巣の周囲の過剰な脂肪による加熱や、

肥満によるホルモン値の変化などがあげられています。適正体重の維持を心がけましょう。

 

ストレス・疲労

ストレス度が高い男性ほど精液所見の結果にも影響がでてきます。

疲労やストレスが、男性ホルモンのテストステロンの分泌量を低下させ、

性欲の減退や精子数減少、精子の運動量低下などにつながっていきます。

現代ではストレスや疲労は切っても切れないくらい多くの方が抱えやすい

ライフスタイルになっているのかもしれません。

また、不妊という問題を介してさらに強いストレスやプレッシャーを男性も感じ

ておりケアや改善が必要な部分です。

 

スキニージーンズやブリーフパンツ

下半身特に精巣回りの通気性が悪くなるような衣服は精巣の熱がこもりやすく

精子にとってはつらい環境です。

ぴったりとしたスキニージンズやブリーフパンツなどは避けた方がよさそうです。

 

性生活の回数が少ない セックスレス

精子が酸化ストレスにさらされることによって質が低下していく中で、

射精回数が少なく精巣上体以降に長くとどまっている男性ほどその酸化ストレスに

さらされ、精子のDNAの損傷率がが高まり運動率が低下するなどがでてきます。

男性の生殖機能を高めるには、

イスラエルのLevitas氏らが2004年にfertility and sterility誌に報告した

Relationship between the duration of sexual abstinence and semen quality: analysis of 9,489 semen samples.

(禁欲期間と精液所見の関係:9489例の精液所見から)によると

禁欲期間は0~2日が望ましいといわれています。

不妊のご夫婦は性生活の回数が月に2回程度と少ない傾向があります。

週に2~3回が望ましいため性生活が少ない場合は改善が必要ですが、

なかなか性については夫婦間で改善することが難しくカウンセリングなどで

第3者に介入してもらいながら改善していくことも望ましいでしょう。

 

精子の質は精液検査だけではわからない

一般精液検査は精液や精子の量的性状を示しているだけであり、

必ずしも精子の質的性状(受精能力)を直接反映するものではないことに留意するとしています。

日本産科婦人科学会雑誌 Vol 61,No.6, N-189, 2009

 

精液所見だけでは、妊娠できるのか、妊娠しやすいのかどうかという事は

わからないといわれています。そのため、精液検査の結果が大丈夫なら安心としてしまうのは

実は危険もあります。男性側の不摂生も本当は妊娠しにくさ、流産のしやすさに

影響が大きく出ています。でも、精液検査が問題なければ大丈夫なんでしょ?という誤解を

生んでしまっているかもしれません。

精子DNAフラグメント(SDF)が受精卵(培養成績や妊娠成績)に及ぼす影響について調べた

研究では、(1)(2)精子DNAフラグメントが30%以上の場合は、

通常の精液検査では必ずしも体外受精や顕微授精の培養成績や妊娠成績と関連してこないといわれています。

通常の精液検査ではわからない、もっと隠された異常があるのではないかと

されています。でもその正体は明らかになっているわけではありません。

精子DNAフラグメントSDFが受精卵に及ぼす影響を検討していて、

隠された異常所見としてSDFが重要ではないかと考えています。

精子DNAフラグメント30%以上では、胚発生率と着床率が低下し流産率が有意に増加してしまったのです。

 

DNA損傷レベルが高いと体外受精すら意味がなくなってしまう?

どれだけ見た目には正常胚であっても、精子のDNA損傷レベルが大きいと、

受精したとしてもその後の成長が望めない、また妊娠率が低い、流産率が高いという事が

おこってしまっています。

2007〜2017年にART妊娠した方を対象に体外受精832名、顕微授精770名を

妊娠12週未満の流産と精子High DNA stainability(HDS)の関係を調べた研究(3)では

HDS15%以下の精子と比べHDS以上15%の精子の流産率は1.41倍も高く、

顕微授精の場合の流産率は1.44倍と優位に高くなっていました。この研究では後方的な研究でありますが

DNA損傷レベルが高い場合は、体外受精や顕微授精などの有効性についても

検討が必要になってしまうかもしれません。また妊娠しにくい原因や流産しやすい原因が

女性だけでなく男性側にも充分にあって、

妊活を考えた時は、夫婦の足並みをそろえて生活を整えていく必要性がありそうです。

不妊治療を受ける場合でも、やはりその効果を高めたり、流産率を低くするためにも

予め、DNAの損傷を抑えるよう、酸化ストレスにさらされる生活は整えていくように

しておきたいですね。

 

精子のDNA損傷は流産率を2.16倍に

精子のDNA損傷と不育症に関するメタ解析された研究(4)では。

精子のDNA損傷と不育症に関する13論文のメタ解析をしています。

不育群579名(流産2回以上)と対照群434名(流産歴なし出産あるいは妊娠継続中)の

男性パートナーの精子のDNA損傷(フラグメント)の状態を比較しています。

対照群と比べ不育群のDNA損傷(フラグメント)は有意に高く、その差は11.9ポイントでした。

繰り返す流産に、DNAの損傷が関連しています。

また、DNA損傷については流産リスクが2.16倍になるというメタアナリシスもあります(5)

ただ、DNA損傷についての検査の仕方については検査法などにばらつきがあり、

実際に検査をしてそれを不妊治療に取り入れていくというのはまだ先になりそうです。

今できる事としては、妊娠や妊娠の維持には、夫婦そろって酸化ストレスにさらされない

ライフスタイルを心がけたり、抗酸化作用が高くなるような取り組みを心がけていきましょう。

 

近年精子数は先進国でも減少の一途

現代では、精子の数がどんどん減っていると言います。2017年の185件の観察研究をまとめたメタ解析(6)で

あきらかになった事実です。

それは、西洋男性の精子が毎年1.4%ずつ減少して過去38年ではおよそ半減してしまったという事です。

しかし、アフリカや南アメリカではこういった現象が確認されておらず、

その原因もこれというものがはっきりと特定できているわけではありません。

肥満やタバコ、化学物質など様々な原因が考えられますが、精子の減少は不妊にも影響しますし、

テストステロンの減少にも関係があります。そのため、テストステロン値を正常に保てるよう

気をつけた生活をおくりましょう。

そして、いくつかの研究により、オメガ3脂肪酸、ビタミンC・ビタミンE・セレニウム・亜鉛などの抗酸化物質、

カルニチン、葉酸をふくむ食品は精子の質を高める事もわかってきています。

そのため、これらを多く含む食品ナッツ類の摂取が精子の質を高めるのかという

研究(7)もされています。

1日60gのナッツ類(アーモンド・クルミ・ヘーゼルナッツ)を14週摂取してもらったところ

WHO基準でも精子の量が有意に増加したり、精子のDNA損傷レベルが改善しています。

もちろん精子の質に関わるのはこれだけではないので、

 

精子の質は精液の質によって左右される

精子のDNAにおいても、精子の質を左右するのは精子が守られている精液の質によって

左右されてもいます。精子だけをよくするという事は難しく、

それを取り巻く環境を整えていってあげることがとっても大事になります。

精子という細胞は、精子の頭部はほとんどが核でできていて、細胞が酸化ストレスにさらされやすく

修復されにくいというポイントがあります。

精子数や運動率が正常範囲でもDNAに損傷を負っているという、

DNA断片化場合があり、精子数や運動率だけでは精子の質を判断することはできないとされています。

また、精子細胞は普通の細胞のようにDNAを自分で修復する機能を持っていないのです。

パートナーに異常がなく、精子数・運動率が正常値であってもなかなか妊娠しないというのはこのためですが、

精子の質に精液が影響しているのも事実。

そのため、精液中の抗酸化作用を高めておくことはもちろんの事、

精子という細胞は生まれ変わってまた作られる細胞である点から、禁欲をせず

射精回数をある程度多くしておくという事も欠かせないという事になります。

 

妊娠には精子の質だけではなく子宮頸管や卵管などの動きも

精子自体の質の良さはもちろん大切だけれど、意外にも精子そのものの動きなどを

サポートしているのが女性側の子宮や卵管の収縮などによる動きです。

精子には自分で泳ぐ運動機能があり、その進行速度は3mm/分程の速度といわれています。

でも射精から卵管膨大部までの精子はわずか5〜45分で到達するという事が研究で言われています。(8)

ものすごい速さであり、精子だけの運動だけではとてもこの時間でたどり着くことができません。

動物実験などでも確認されていますが、子宮収縮、卵管収縮、卵管繊毛の働きが精子の進行を

サポートしているのではないかとされています。オキシトシンという愛情ホルモンによって

この子宮収縮、卵管収縮、卵管繊毛の働きが促進されることもわかってきています。(9)

精液所見があまりよくないのに、自然妊娠できるケースとして、女性側の子宮や卵管などの収縮などに

よって妊娠までのサポート行われ本当に奇跡のような受精につながっていくのでしょう。

女性はオキシトシンを分泌できるような生活を夫婦二人で心がけていることもとても大切でしょう。

 

 

参考文献

メンズヘルスクリニック東京 男性不妊の原因~不妊になりやすい人の特徴~

英ウィメンズヘルスクリニック 精液所見の正常値ってなに?(その1;WHO基準の場合)

医療法人浅田レディースクリニック 男性不妊の原因と種類・検査

竹島徹平 ART治療成績向上のための男性不妊治療の役割. 不妊と不育の新たな課題 産婦人科の実際 66/13 2017年12月号 1839-1844. 金原出版

Zhao J et al.  Whether sperm deoxyribonucleic acid fragmentation has an effect on pregnancy and miscarriage after in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection: a systematic review and meta-analysis. Fertil Steril. 2014 Oct;102(4):998-1005.

Li Y et al. Association between socio-psycho-behavioral factors and male semen quality: systematic review and meta-analyses. Fertil Steril. 2011 Jan;95(1):116-23.

(1)Fertil Steril 2019; 112: 483 doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.04.029

(2)Fertil Steril 2019; 112: 466  doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.05.016

(3)Fertil Steril 2019; 112: 46 doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.03.013

(4)Fertil Steril 2019; 112: 54 doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.03.003

(5)Hum Reprod 2012; 27: 2908 

(6) 2017 Nov 1;23(6):646-659. doi: 10.1093/humupd/dmx022.

(7)  European Society of Human Reproduction and Embryology

(8)Fertil Steril 1973; 24: 655

(9)Fertil Steril 1961; 12: 151

この記事の著者

保健師・看護師

岡田和子

山梨医科大学卒業、看護師・保健師国家資格取得。 NPO法人日本不妊カウンセリング学会所属。
病院や企業にて心と体の健康管理に12年従事した後、不妊カウンセラーとしてパーソナルカウンセリングを行う。

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