不妊ストレスには心理的ケアやカウンセリングが重要な理由

不妊ストレスには心理的ケアやカウンセリングが重要な理由

ストレスは不妊の原因にもなってしまいます。

妊娠できないことが最大の悩みであり、ストレス源となりますし、

周囲の何気ない言葉にも傷つきやすく、人と関わる事も避けたくなってしまいがちです。

これほど頑張ったのだから今度こそは!妊娠にも期待がかかりますし、結果が出なければ

落ち込んでしまいますよね。

 

ストレスは不妊の原因にもなってしまう

ストレスは男性にも女性にも不妊のリスクを高める可能性があります。

アメリカの研究Hum Reprod 2014; 29: 1067 では、

ストレスと不妊には関係があり、妊娠率が0.7倍に、

そしてストレス度が高い方が妊娠までの期間は長引き不妊症になる割合が2.01倍にもなったのです。

ストレスは、身体の様々な機能に悪影響を与えますが、生殖機能も例外ではないのです。

どのようにして、ストレスが不妊を招くのかみていきましょう。

 

ストレスで女性は妊娠しにくくなる

過度なストレスは、排卵障害や着床障害を引き起こす可能性があります。

通常であれば、卵子はホルモンの指令によって成長し、順調に育った卵子が排卵されます。

しかし過度なストレスは、排卵を起こすために必要なホルモンの分泌を妨げるため、

卵子に指令がうまく出せなくなり、排卵障害を引き起こすのです。

またストレスによって自律神経が乱れると、受精卵を子宮に着床しやすくするのに必要な黄体ホルモンの分泌も妨げます。

黄体ホルモンが不十分だと、子宮内膜が十分に厚くなることができず、着床障害に繋がるのです。

ストレスが不妊の原因に

 

ストレスは心だけの問題ではなく、体の健康をそこなってしまうものです。

精神的なストレスが、自律神経を乱し、女性ホルモンの分泌を乱してしまう事で

排卵や着床にもトラブルがおこり妊娠を遠ざけてしまいます。

ストレスをによってダメージを受けた場合、体の中ではセロトニンというホルモンを

使って修復したりもしますが、大量に使ってしまうと修復が追いつかず

自律神経を乱してしまいます。この自律神経は血流にも関わるものなので、

卵子の質にも影響が出てきてしまうのです。ストレスがかかると、卵子の発育にも影響が

でてしまうというので、妊活中はケアしり、カウンセリングなどを活用したいところですね。

 

ストレスで男性も不妊リスクが高まる

受精に必要な精子の質を下げてしまう恐れがあります。

仕事や人間関係の疲れでストレスが溜まると、テストテロンと呼ばれる男性ホルモンの分泌が低下します。

その結果、精子の数や運動率が悪くなり、精子の質が落ちてしまうのです。

また、プレッシャーやストレスが心因性ED(勃起障害)を引き起こし、不妊に繋がることもあります。

勃起には、副交感神経が働いている状態(=リラックスしている状態)でないと起こらないため、

プレッシャーがかかった緊張状態では勃起ができなくなってしまうのです。

ストレスが不妊の原因に

 

男性の生殖にもストレスは悪影響を与えてしまいます。

ストレスによってホルモン分泌が低下してしまう事で、つくられる精子の質が

低下してしまうのですから、気をつけたいところです。

ストレスを抱えているほど、睡眠にも問題が出てきやすくなります。

睡眠の不足もテストステロン値を低下させてしまうため、男性側のストレスケアも必要です。

そして、ストレスを抱えていると交感神経が優位になりやすくなるため、

精神的なリラックスにかけ、妊活のプレッシャーが勃起障害や射精障害にもつながって

自然妊娠を遠ざけてしまいかねません。

男性の生殖は思った以上にデリケートなので、1度でも、中折れしてしまった、射精できなかった

勃起できなかったと思うとより自信を失ってしまいかねません。

排卵のタイミングなどもそうですが、タイミング重視のセックスもプレッシャーのもととなって

しまうため気をつけたいところです。

 

毎月妊娠の可能性29%低下させるストレス

女性悩む

オハイオ州立大学の免疫学の学者が率いる研究チームは不妊とストレスに関する驚くべき研究結果を発表しています。

 

受胎前に受けるストレスが不妊の一因である可能性を示唆するデータが、今回初めて示された。

オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターによる研究。

研究チームはイギリスで行われた先行研究で、高レベルのストレスと妊娠確立の減少の関連性を実証した。

本研究では更にストレスが不妊のリスク増加と関連していることを示し、新しい洞察を加えている。

コートニー・デニング – ジョンソン・リンチ氏率いる研究チームは、

唾液で測定されるストレスの生物学的指標であるα-アミラーゼのレベルが高い女性は、

この酵素レベルの低い女性に比べて、 妊娠する可能性が毎月あたり29%低く、避妊していない性交を12ヶ月行ったにも拘らず、

妊娠していないという不妊の臨床定義を満たす可能性が倍以上高かったことを明らかにした。

 

オハイオ大学の研究者らは不妊ではない18歳から40歳の米国人女性501名を対象に、

妊娠するまでの1年間(人によってはそれ以上)をかけて行われた追跡調査で、

ストレスレベルの高いグループの女性は低いグループに比べて不妊症とされるリスクが2倍になることが

示されました。

毎月妊娠する可能性が29%も低下してしまうということ、妊娠までにかかる時間が

伸びる事がわかりました。

 

ストレスは妊娠後の生活にも影響する

不妊で悩んでいる間に蓄積するストレスは、妊娠できた後にも影響を与えてしまうほど。

妊娠できてもなお、不妊で悩んでいた時の事をモヤモヤと思い出したり、

子どもが無事に育つのか不安になったり、傷が治った後にかさぶたができて、

それがずっと残ってしまうような感じに。燃え尽き症候群のようになって、

妊娠後にいっきにやる気がなくなってしまって育児が苦痛になってしまう人もいるくらいです。

不妊という事で自分に対して自信を失ってしまったり、女性として十分ではないとか

能力が劣るのではないかと不安になり、不妊治療で授かれたからと言っても

それだけで喜び切れることがなく、妊娠中は、無事産めるか不安を感じ、

また母親となって育てていくことに不安を感じ、ずっとずっと不安とお付き合いしながら

不妊のことが頭から離れない事で悩むケースもあります。

実際に不妊治療をした方への聞き取りなどでも、出産後のママ友の中に入るのに

自信がなかったとか、子育てをしていくときに周囲と比較して苦しんだということを

語る方もいます。

 

本当に、不妊で悩む間に、とても自分の心を傷つけ、とても苦しい思いをする。。。

これが不妊という問題に取り組むという事かもしれません。

 

妊活中のストレスのケアは女性が妊娠し、そしてその後出産し、さらには安心して子育てを

していくためにもとても重要な役割を果たします。

妊活は赤ちゃんを授かることが目的かもしれませんが、人生の目的を考えれば、

楽しく暮らし、充実した成長を感じられる、つながりや支え合いを感じられる家族関係づくり

子育てがあるでしょう。

 

不妊治療中のストレスもとてもつらい

不妊治療を始めるまでは、仕事も人生も特につまづいた記憶もなく

それが30歳すぎにして、「運が悪かったね、残念でした!」と告げられる日々。

それは自分に対する自信が、ガラガラと音を立てて崩れ去っていくような毎日だった。

どうしてこんなことになってしまったんだろう? 私が何か悪いことでもした?

私の体はそんなにポンコツなの?——何度も自問自答を繰り返し、

スマホで「不妊治療 失敗 原因」なんて言葉で検索しまくった。

8年間の不妊治療

 

不妊ストレスの中では、不妊治療に関わるものも決して少なくありません。

不妊治療不妊という言葉があるくらい、治療が女性にとって負担がとても大きいものに

なるからです。体への痛み、経済的な負担、仕事をしながらの調整など、

また治療に通えば医師から言われる次の診察の指示。

もちろん、その通りに通院できるようにしたいけれどそれほど簡単でもないけれど、

それを言うと、では治療は無理ですねと言われてしまう。

不妊治療に対して、通院に関わるストレスを感じない女性もほとんどいないでしょうし、

心身症や軽度なうつレベルになってしまいます。中には、自殺まで考えてしまう人も

いるくらいです。

不妊という問題が人生で初めて努力だけではどうにもならなという壁を感じる

事も多いですし、夫婦での温度差に苦しむこともあります。

自分で、自分の人生の大事な部分をコントロールできないというのは大きな不安につながります。

 

不妊カウンセリングはなぜ必要?

最新の生殖補助医療技術を追求するばかりにその強迫観念から、

不妊カップルは今とその将来をかけて、願いが成就しないかもしれない長いときを「不妊」のなかで過ごすことになるのです。
問題は、生殖補助医療技術における妊娠率などのエビデンスにとらわれすぎて、

不妊カップルのQuality of lifeに重要なメンタルケアの対応が立ち遅れている現状です。

カウンセリング

 

不妊という問題は、赤ちゃんが授からないということから、

本人の存在や能力などへの価値までも損なわれていく可能性が高く、

不妊治療などでは結果が出ないと、妊娠しなたっとのと同時に、

赤ちゃんがいるであろう未来や、望む人間関係までもが手に入らないかのような

ぽっかり穴が開いたような体験を何度も繰り返してしまいます。

何度も傷ついては、ゴールが見えないなかを頑張り続ける事で、

楽しく暮らす、幸せを感じながら過ごす、心穏やかに健康的に生きるという事

を損なっていってしまう事など問題はとても広く深くなっていってしまいます。

今度こそはと、本当にくたくたになるまで全力投球し続けてしまいかねません。

でも、そんな方の力の入り過ぎがかえって夫婦関係にヒビが入ってしまったり

自分達の健康をそこなったり働く意味すら見えなくなってしまったり

家族で過ごす心地よい空間や時間さえも失ってしまいがちです。

そのため、ストレスへのケアが行き届かない状態から回復していくことや

どんな判断をしていったらよいのかの手助けが必要となり、一緒に歩みよりながら支えとなる

カウンセリングが必要になりと言える時期があります。

 

不妊ストレスへのケアは行き届いていない

あなたは、妊活を始めてからどれくらいの期間がたっていますか?

何年も不妊治療を続けていると、治療そのものが日常生活に溶け込んだような生活になります。

そのため、「治療していない自分」が想像できなくなってきてしまいます。

いったん生活のなかに治療のプログラムが組み込まれると、

それを辞めることは新たなライフスタイルの構築を求められることになります。

やめるにやめられないという事もおきてきます。

「長年見続けてきた幻想の子ども」を喪失することだともおもいこんでしま

しまうこともあり、子どものいない人生をあえて選択するかのような決断はなかなか難しいのです。

このように不妊症を経験することは、コントロール感覚、つまり、

自分に関することは自分で決定・実現できるという自己効力感を失われる性質をもっています。

生物学的な面はコントロールするには限界があるのだという

現実を受け入れることはそう簡単な事ではありません。

そこでカウンセラーは、自分の人生の選択や将来に関する決断については、

完全にコントロールできるのだということを当事者が認められるように

認知行動療法などを用いて援助していく必要があるといわれています。不妊で悩んだ女性への

心のケアは行き届いている状況ではなく、自分の人生を自分でコントロールできているという

感覚をとり戻す手助けが必要といえます。

 

カウンセリングなど心理的サポートの必要性

デンマークの39の論文(R)をメタ解析した研究では、2746名を対象に心理的サポートが

妊娠率を高め特に女性には有効であることが示されています。

認知行動療法や心理療法など介入によってストレス度が0.59倍に優位に軽減し、

妊娠率が2.01倍に優位に高まりました。

不妊症に限ったことではありませんが、ストレス、不安や抑うつといった心理的要因が

健康レベルを低下させて病気を引き起こす事は知られています。

特に認知行動療法などは科学的根拠が多く研究されている心理療法であるため

妊活中には積極的に取り入れていって欲しい点でもあります。

妊娠できるか不安、望んでいるのに授からない苛立ち、パートナーの理解度や協力度の

温度差に精神的にも女性は気分も落ち込みやすくなります。

カウンセリングといった心理的なサポートは特に女性に有効とこの研究でも示されました。

 

不妊心理の移り変わり

女性お腹にハート

不妊で悩む間の心理状態は以下のように変化していきます。

最もつらい時期には、ストレス度も高く本人も日々の生活の中で

不妊という問題が大きなものとして捉えそれに振り回されるような感じにもなってしまう

時期もあります。

想像期・・・まだ自分が不妊かどうかもはっきりしない時期です

 

混乱期・・・想像期から、周囲の妊娠や、まわりから赤ちゃんはまだ?などプレッシャーを

かけられたり、不妊治療へ通いだしたりしたことがきっかけで、ストレス度が

高まっていく時期です。心の中では不妊という事を受け入れる事も難しく、

焦りを強く感じる時期でもあります。感情の起伏も激しく、精神的にも不安定になりやすく

夫婦関係も悪化してしまう時期です。うつ状態になったり、人間関係でも距離をとろうとして

変化が出てくる時期で、もっともカウンセリングが必要な時期になります。

 

統制期・・・このころになると、自分が他者に不妊であることを話したりできるようになり

同じ体験をした人と話したりといった事も出てきます。また不妊治療だけが全てではなく

不妊という問題を人生の問題として捉えるようになる傾向もあります。

また不妊治療以外にも関心をもてるようにもなる時期です。

妊娠のために必用な事を視点を考えて捉えることができるゆとりが出てきていて、

カウンセリングなどでの取り組みにと合わせる事で不妊治療だけでなく、前向きな妊活が

できる様にもなります。

和解期・・・この時期になると、不妊体験を人生と合わせて考えることができ、

不妊と向き合ってきた自分を受け入れられるようになります。その後の人生を不妊治療と切り離して

考えられ不妊を活かすという生き方ができるようになります。

不妊という体験に意味づけをし、自分の体への愛着や夫婦の絆を深め、後の生き方を

新たに築き上げていかれる時期になります。

 

どんな点で不妊カウンセリングは役立つか

妊娠 赤ちゃん

不妊で悩んでいる期間に心理状態は変化していきます。不妊ストレスは気が付けば

どんどん蓄積していってしまう点も問題です振り返れば妊活を始めた時に比べ、

今感じる不妊ストレスはずっと苦しく重たいものになっているのではないでしょうか。

周囲が気になる、人から言われた些細な事にとても傷つくといった時期もあります。

生理がきたら絶望感を感じずにはいられない時もあるかもしれません。

期待が高まれば高まるほど、不安も強くなりますし結果に対する落ち込みも大きくなります。

 

選択・決断しのカウンセリングサポート

不妊で悩むとき、自分がどんなことに取り組んでいったらよいのか、

不妊治療をはじめたらどんな治療を選択していったらよいのか、いつまで続けたらいいのか

いつ辞めたらよいのかいつも選択と決断を迫られます。

妊娠するまで!と必死に頑張ってしまうというケースもあります。

あなたが悩んでいる時の意思決定を行っていく際に、医学的な面だけでなく、

あなたの気持ちやパートナーの気持ち、夫婦での価値観などそういった点からも選択して

社会的な面、人生というのを通してどう決定づけていくかをサポートする役割を不妊カウンセリング

は持っています。

 

心の支えになるカウンセリングサポート

妊活中の悩みは、複雑になり精神的にも身体的にも経済的にも苦しくなります。

子どもを授からない事に始まり、パートナーとの温度差、周囲の妊娠や

言われる些細な事や反応に傷ついている点などを、

心理的なサポートができるよう、認知行動療法や瞑想、イメージトレーニングなどと合わせて

本人がおかれたストレスフルな状況から解放されるような手助けをするという役割もあります。

 

夫婦の性生活を楽しいもの快適に取り戻すサポート

妊活を始めると、夫婦の性生活が苦痛、義務的となってプレッシャーも感じやすく

性生活そのものの回数が減ってしまうという事がおこってきます。

過去の日本産婦人科学会での研究報告でも不妊治療をはじめたら夫婦の性生活が

以前は4回はあったのに、2回以下に減ってしまったというものがありました。

プレッシャーを感じる事で男性は性行為そのものがうまく成り立たない勃起障害や射精障害

にまでなってしまう心因性の性行為障害を起こすこともあります。

そういった点の回復にもカウンセリングは役立ちます。

 

 

参考文献

平山史朗・岡親弘・高橋克彦・富山達大「長期不妊症患者に対するカウンセリング」『不妊カウンセリングマニュアル』メジカルビュー社、2007年

平山史朗「生殖医療におけるカウンセラーの認定制度」産婦人科治療、91巻6号、2005年
森崇英・久保春海・高橋克彦『コメディカル ARTマニュアル』永井書店、2006年

―――矢野ゆき「個人開業カウンセラーによる生殖心理カウンセリング」
―――平山史朗「生殖心理カウンセラーの役割と資格」

矢野ゆき「『不妊』の受容過程の段階とその特徴―心理的援助のための考察―」
愛知淑徳大学大学院コミュニケーション研究科 1999年度修士論文、2000年

1 C. D. Lynch, R. Sundaram, J. M. Maisog, A. M. Sweeney, G. M. Buck Louis. Preconception stress increases the risk of infertility: results from a couple-based prospective cohort study–the LIFE study. Human Reproduction, 2014; DOI: 10.1093/humrep/deu032

Hum Reprod 2014; 29: 1067

Efficacy of psychosocial interventions for psychological and pregnancy outcomes in infertile women and men: a systematic review and meta-analysis

この記事の著者

保健師・看護師

岡田和子

山梨医科大学卒業、看護師・保健師国家資格取得。 NPO法人日本不妊カウンセリング学会所属。
病院や企業にて心と体の健康管理に12年従事した後、不妊カウンセラーとしてパーソナルカウンセリングを行う。

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