不妊ストレス・焦りや不安のリスク回避に認知行動療法

不妊ストレス・焦りや不安のリスク回避に認知行動療法

すっきり女性

不妊を克服し、妊娠、そして出産に向かうには、どうしてもついて回る

不妊ストレスと上手にお付き合いし、ケアしながらコントロールしたりマネジメント

できる能力が必要です。ストレスが妊娠確率を下げる、認知行動療法が着床率を高めるといった

事はほとんど知られていないでしょう。不妊は長期化すればするほどストレスがかかり、

またそれが、人間関係や身体への悪影響になるなどして、

より事態を複雑にさせていってしまいます。

妊活中の不妊のつらさでいえば、不安や焦り、そして恐怖心といった感情が

うまくいかない事態と相まって、ひどく落ち込んだり、イライラ人にあたってしまうといった

事にもつながっています。そんな不妊ストレスをケアしていかれる認知行動療法といった

心理療法と妊娠しやすさへの影響についてみていきましょう。

 

心と体の状態がよくなるためのアプローチなし

男女

現代では、晩産化、少子化、という流れの中で、子どもが欲しいのに子供ができないという

不妊で悩むカップルが5.5組に1組とまで言われる時代になりました。

多くの方が多かれ少なかれ妊娠しにくさに悩みやすくなっています。

そして、子どもができないと、とにかく妊娠しやすくするにはという事で、

サプリや漢方、治療など力がそそがれています。

不妊治療における生殖医療の進歩や期待度はとても大きいものですが、

それでも妊娠しやすさに必要なものは思った以上に、日々積み重ねている

習慣という影響が大きいことにあまり気づかれてはいません。

ストレスがこんなにも不妊に影響するなんて、本気でここを何とかしないとと思っている人も

少ないかもしれません。生殖医療の現場でもカウンセリングなどが取り入れられるようにもなり、

心理療法を行っている医療機関もあるかもしれませんが、心と体の相関関係を理解し、

本当にそこへ介入しようとする試みは皆無に近い状態かもしれません。

だからこそ、多くの女性がストレスを抱え、しかも度合いが心身症レベルにまでなっていたり、

仲にはうつになったり自殺願望や離婚にまで発展してしまっていることだってあるのです。

 

心と体のバランスが整うと妊娠しやすくなる

早稲田大学教授 心療内科医の熊野宏昭先生の著書「ストレスに負けない生活 ー心・身体・脳のセルフケア」

では、ストレスとの付き合い方についてこのようにかかれています。

ストレスに負けないようにするには、

ストレスをなくすことでも、ストレスから逃げることでも、

ストレスを発散することでもなく、

ストレスに影響されない、もしくは、影響されてもすぐに元に回復するような、そんな心の状態をつくること

が大切であるとされています。近年注目されている心の能力である、レジリエンスそのもの。

レジリエンスとは、元々の意味は、「回復力、弾性」であり、弾力のあるゴムタイヤを押しつぶしても

ボヨンとすぐに元の形に戻ることができ、あるいは節がある植物がが強風に煽られてしなっても、

折れることなくまたすっくと立ち直る、そんな回復力のことなのです。

レジリエンス研究の第一人者であるペンシルベニア大学ポジティブ心理学センターの

カレン・ライビッチ博士は、レジリエンスとは「逆境から素早く立ち直り、成長する能力」と定義しています。

妊活をしているとストレスを抱えてしまう、不妊治療をしたらもっと深刻なストレス度に

なっていってしまうことは多くの妊活女性が経験経験します。

しかしそのストレスが身体や不妊リスクを高めてしまう事があまり知られていませんし、

そのストレスをつらいと感じながらもケアできている状況や環境が整ってはいません。

心と体はとても密接につながっていますから、認知を変えてストレスを抱え込まずに、

前向きに心を立て直せる力がとても大切になっていくでしょう。

 

不妊になる危険度が2倍!

不妊悲しむ女性

アメリカの研究では、ストレスがどれくらい強くかかっているのかを調べるために、

唾液の中のストレスマーカーであるアルファアミラーゼ濃度と妊娠までの期間を調べています。

この結果では、

ストレスの強度によって、ストレスが強いほど、ストレス度が低い人に比べて

妊娠までの期間が1.3倍近く違い、さらに不妊症となる危険度としては、2倍近くなり、

妊娠する力が低下することがわかっています。

ストレスによって、ストレスホルモンがたくさん分泌されると、他のホルモンバランスへも悪影響が出始めます。

ストレスの対処をする部分は、脳下垂体の近くにあって、他の女性ホルモンなどへの分泌にも大きく影響してしまいます。

他にも、免疫色を低下させるので、細胞が元気をなくし、

酸化から修復できずにどんどん錆びつきやすくなってしまいます。

卵子の老化に歯止めがかからず劣化するばかりとなってしまいます。ストレスによって生まれる

活性酸素は酸化ストレスとなり細胞の劣化や老化に関わっています。

 

ストレスを感じうつ的になると気持ちや行動が変わる

ストレスを強く感じていると、抑うつ感が高くなりうつっぽくなってきてしまいます。

うつ度が高まると、心の中ではより不安や焦り、恐怖心や苛立ち、悲嘆感なども

高まってしまいます。

うつ的になるとまずは心の中で3つのマイナスな思考をしてしまうパターンがあります。

自分や周囲、将来に対しても前向きにとらえることが難しくなります。

 

・自分のことをネガティブにとらえすぎてしまう

自分を責めてしまったり、自分はダメだとか自分の能力を過度にマイナスにとらえてしまう

傾向がでてきます。

 

・周囲の人や物事に対してもネガティブに捉えてしまう

うまくいかないと思いこんだり、相手が悪いと思いこむ場合もあります。

周囲からこう思われているのではと思いこむ傾向がつよまります。

 

・今後を前向きにとらえられない

絶対にうまくいかない、またダメだろうとおもったり、どうせ自分はと諦めたり

前向きに考えられない傾向が強まります。

 

そして、これらの結果行動も先延ばしにしてしまったり、活動量そのもの減ってしまいます。

何もできないと自分を責めたり、楽しい事や達成感を感じられず充足感が

得られないため行動量そのもの減って元気をなくしてしまいます。

やらなくてはいけない事、取り組むべきことを先延ばしにしてしまう傾向が出て、

結局問題となっている事の改善ができずにとどまってしまうという事がおこります。

また周囲に対してもネガティブになりやすいため、助けを求めたり支えてもらうという事が

難しくなり、ますます自体が悪化しやすくなってしまいます。

心がストレスを感じれば、うつ度が高まり、行動が減り、結果問題が解決されにくく

悪循環を生んでいってしまいます。

 

不妊ストレス軽減 認知療法・認知行動療法とは

希望の空

出来事-自動思考-感情-行動の相互関係に注目した方法で、物事のとらえ方を変える事で、

自分の中にうまれてくる気持ちを変えストレス緩和に役立ちます。

認知療法・認知行動療法は、認知に働きかけて気持ちを楽にし健康を取り戻していくための

精神療法(心理療法)の一種です。認知は、ものの受け取り方や考え方という意味であり、

ストレスは物事のとらえ方考え方によって生じています。

ストレスを感じると私たちは悲観的に考えがちになって、

問題を解決できないこころの状態に追い込んでいき悪循環となってしまうのですが、

認知行動療法では、そうした考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていきます。

 

「現実の受け取り方」や「ものの見方」を認知といいますが、

認知に働きかけて、心のストレスを軽くしていく治療法を「認知療法・認知行動療法」といいます。
認知には、何かの出来事があった時に瞬間的にうかぶ考えやイメージがあり「自動思考」と呼ばれています。

「自動思考」が生まれるとそれによって、いろいろ気持ちが動き行動することになります。

ストレスに対して強い心を育てるためには「自動思考」に気付いて、それに働きかける事が役立ちます。

引用 認知行動療法

 

認知行動療法で心のストレスが招く悪循環を回避

妊娠する女性

酷く落ち込んだり、不安になっていたり、傷つくようなことが続くと、

どんどん過敏反応してしまいより不安や焦りが高まったり、些細なトラブルでも

大きくとらえ落ち込んだり傷ついたりしてしまうものです。

ストレスを抱えているほど、睡眠にも影響がでてきて寝付きがわるい、睡眠時間が短い

といった事も起こりますし、自律神経のバランスが乱れてしまうということもあります。

ストレスそのもの不妊リスクが高まったり、流産へのリスクにもつながります。

そういったストレスが招く影響は体への影響だけにとどまらず、

妊活中だったら前向きな夫婦の関係や性生活へも影響が出てしまうという事もあります。

そういった更なる悪影響やリスクを回避し、問題となっていることに対処できるような

冷静な心も必要になっていきます。そのために認知行動療法はとても役立ちます。

精神的な病気だけにとどまらず、海外アメリカでは生殖医療の現場でも取り入れられています。

 

私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けています。

これは、通常は適応的に行われているのですが、強いストレスを受けている時やうつ状態に陥っている時など

、特別な状況下ではそうした認知に歪みが生じてきます。

その結果、抑うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が強まり、さらに認知の歪みが引き起こされるようになります。

悲観的になりすぎず、かといって楽観的にもなりすぎず、

地に足のついた現実的でしなやかな考え方をして、いま現在の問題に対処していけるように手助けします。

引用 認知行動療法センタ-

 

認知行動療法など心理療法が妊娠率を高める

妊婦お腹に赤ちゃんペイント

体外受精や顕微授精を受けているカップルへの心理療法は妊娠率を高めることが発表されました。

ストレスをやわらげ、妊娠率を改善するのに効果的であるという最新の研究結果が、

デンマークのオーフス大学の研究グループによって発表されま、ストレスを

認知行動療法によって和らげていくことが妊娠率を改善させるというのです。

この研究はシステマティックレビューとメタ解析という「最も信頼性が高い」

とされている手法で行われているため、信頼度が高いことから心のケアは妊娠確率を高めるとともに

不妊治療を拭ける方はその治療成績にも影響を及ぼすことが信頼性が高い研究によって明らかに

されたのです。海外では、不妊治療治療を受ける場でもこういった認知行動療法が受けられる

医療機関もありますが、日本はそうでもありませんし、実際にこういった心へのケアの重要性も

低いと言えるでしょう。不妊にストレスがつきものなのに、そこを改善するための

適切な「心のケア」に取り組めるような環境が整ってはいないのが現状でしょう。

 

認知行動療法では日々のケアでストレスの緩和に

指差す女性

認知行動療法では、自動思考と呼ばれる、

気持ちが大きく動揺したりつらくなったりした時に浮かんできた自分の考えに

着目していきます。物事には思いこみやこうすべきといった価値観によって

認知が違ってきます。それがどの程度、現実と食い違っているのかをさし測り、

自分の中に浮かんでくる思考のバランスをとれるようにしていきます。

それによって問題解決を助けていくのですが、こうした作業が効果を上げるためには、

カウンセリングはもちろん、ホームワークのようにワークを用いて

日常生活のなかで行うことが不可欠となっていきます。

日々、心のケアを行っていくこと、日々の心のメンテナンスがとても重要になっていきます。

落ち込むことや傷つくこと、つらい事もありますが、そういった場面での感じ方や

捉え方を変えてダメージを減らし、さらにそこから早くに

立ち直っていくことが妊娠しやすさにつながっていくという事になります。

 

医師も感じる心の平穏さが妊娠につながる大切さ

妊婦 妊娠

エビデンスを重んじて、生殖医療・不妊治療の現場で働いている医師も、

妊娠を望む女性の心の中に平穏さがある事の大切さを感じています。

不妊治療中の女性は、ストレスが多く、さらに抑うつ的になりやすくあります。

不安感がたかまったり、抑うつ、悲嘆感、怒りなども起こりやすくなります。

どんどん元気をなくしていってしまうのです。

不妊治療をしているのに、妊娠できず、不妊治療を辞めたことで気分が解放され

リラックスできるようになって自然妊娠できたという話もよく聞きます。

以下のように心の状態が妊娠しやすさにつながり、また不妊治療だけが妊娠するために

重要なのではない事もわかります。リプロダクションクリニックの松林秀彦医師も以下のように

公表しています。

 

妊娠治療が万能ではないこと、平穏な心が重要であることを示しています。

妊娠治療をやめることは心理的にダメージを受けている女性において、

妊娠を成立させるもうひとつの選択肢であるかもしれません。

平穏な心は、張りつめていた気持ちが途切れた時に、知らず知らずに生じるようです。

引っ越し、転勤、転職など、あるいは治療のお休み期間中やステップアップ直前など、

気が抜けている時に自然妊娠することをしばしば経験します。

心のケアの重要性を研究し発表して来ました。

引用 妊娠にはニュートラルな気持ちを

 

心のストレスケアがこれほどに妊活に重要とは

悩む不安女性

おそらく、不妊や不妊治療にはストレスが伴うことはわかているけれど、

そのことで治療成績が悪くなるとは、それほどには思っていないという方は

多いのではないでしょうか。また、「心のケア」で妊娠率がよくなるとも、

それほどには思っていない方も多いでしょう。

さらには、「心のケア」は大切だけども、どうすればいいのかがよくわからないというところも

あるのではないでしょうか。

デンマークの信頼性の高い研究結果が発表されたことによって、妊活においてのメンタルケアの重要性や

ストレスケア(認知行動療法をはじめ心理療法)によって妊娠しやすさが

大きく変わるという認識があらたまって、さらには多くの女性が関心を持ち

そのケアを受けられるような環境が整っていったら嬉しいと思います。

 

まとめ

ストレスが心身両方へ働き掛けて健康を害していってしまいます。

心には形がなく、そのため、精神的な関りがどれくらい妊娠しやすさに影響するかという事が

あまり知られていないですし、心のケアの仕方も知られてはいません。

認知行動療法などにより、カウンセリングでの関りや、日々の自分の思考に焦点を当てて

自分がどう考えどんな気持ちを抱くのか、そしてバランスを欠いたりしているものを

整えていく作業において心は穏やかさを取り戻していかれます。

またその取り組みが妊娠確率をも高めることが信頼できる研究などでもわかってきたのですから

妊活女性の心に平穏さと癒し、セルフケアに取り組んで欲しいですね。

 

参考文献

Fam Relat. 2017 Oct; 66(4): 644–658.doi: 10.1111/fare.12281 Responding to Infertility: Lessons From a Growing Body of Research and Suggested Guidelines for Practice

Evidence-Based Management of Low Back Pain2012, Pages 286-299 CHAPTER 21 – Cognitive Behavioral Therapy

Reference Module in Neuroscience and Biobehavioral Psychology2017 Anxiety DisordersAuthor links open overlay panelM.MiyazakiJ.J.Benson-MartinD.J.SteinE.Hollander

この記事の著者

保健師・看護師

岡田和子

山梨医科大学卒業、看護師・保健師国家資格取得。 NPO法人日本不妊カウンセリング学会所属。
病院や企業にて心と体の健康管理に12年従事した後、不妊カウンセラーとしてパーソナルカウンセリングを行う。

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