妊活と仕事の両立は悩みやすい 専念それとも両立どっちがいい?
不妊治療と仕事の両立はとても難しく悩む女性も多いです。
なかなか悩みがデリケートで相談しにくく休みがとりにくい、気を遣って
調整するのも大変と思う女性も多いです。
不妊治療に通うために仕事はやめるという事を決断される方もいますし、
逆に医師の指示通りに治療に通えないならやめてと言われたという事も相談で受ける事もあります。
妊活中は仕事をしていてもいいのか、仕事をやめて専念した方が良いのかというご質問も
うけます。
妊活中の仕事についてみていきましょう。
妊活中は仕事をしていてもいいの?
仕事をしていて妊娠できるのでしょうか?というご質問をいただくことがあります。
過度に負荷やストレスがかかる仕事はやはり、妊娠しにくくなってしまうという点は
あります。ストレスや過度に負担がかかる状態は
心理的なストレスに加えて、体の中では交感神経がたかまり、血圧が上昇していきます。
そのため、それが続くような状態や、忙しすぎてへとへとというくらい
働いているとやはり体の中の自律神経のバランスは乱れてしまいます。
血圧と妊娠しにくさは関係があり、累積妊娠率も低下していってしまいます。(1)
また、流産率が高まる(2)という点や酸化ストレスにさらされる事によっても
卵子もダメージを受けたり、妊娠を維持しにくくはなってしまいますから、
負担を感じるほどの仕事になっていたら、仕事を減らす、
フルタイムから時間を短くする働き方へシフトして、仕事のダイエットも大切でしょう。
仕事をやめて妊活に専念したら、こうなった
仕事が大変で、疲れてしまったり、なかなか家事をするのが大変でちゃんと
妊活に専念専念したいと考える方もいます。しかし、仕事をやめてみて
みなさんが直面するのが、
確かに仕事のストレスはべつなくなったけれど、別の気がかりがでてきて、
結局ストレスが尽きないという事です。
仕事をやめて体は楽になったけれど、今度は、仕事をしていない事に不安になって
しまったという事なのです。特に、仕事をやめたことで収入が減って不妊治療や妊活関連にも
費用がかかるのに、お金が減っていく不安や、
働いていない事に罪悪感を感じたり、夫に申し訳ないと感じたりという点もありますが、
子供もできないで、仕事もしていない自分はダメだとか、
休んでいる事をポジティブに捉えることができなくなっていって結局メンタルに
ダメージがおきていたりもします。
仕事をしないと、人は所属感がなくなってしまったり、ステータスやアイデンティティにも
影響がでてメンタルを病みやすくなってしまいます。
仕事をしない事と幸福感低下には関係があるといわれています。
かといってたくさん働くのもやはり大変なので、適度なお仕事というのが妊活中は大切に
なっていくでしょう。
いったいどれくらい働いたらメンタルに悪影響がでない?
イギリス、ケンブリッジ大学の研究では、働いていない事で、メンタルが悪くなることが
知られているが、いったいどれくらいなら問題がないのかを、
71,113人の男女を対象にした研究をしてくれています。(3)
9年間の観察研究で、メンタルヘルスの変化、人生の満足度、労働時間の変化
などを調べた結果、週に1日以上働けば、メンタルヘルス低下を回避するという事です。
一般的な週に36~40時間の労働より少なくても心の健康にはよくも悪くも変わらないという事なので、
負担にならない限り、本当に少しでもいいから、自分が働き属するコミュニティがある
という事は大事なポイントにもなるでしょう。
妊活のために仕事をやめたと思うと、妊娠できなかった生理でリセットした時は
より思い詰めやすいでしょうし、日中妊活の事ばかりで頭がいっぱいになりすぎても
やはりいい状態を作ってもいかれないものですよね。
週にどれくらいの労働なら不妊リスクを高めない?
労働時間による不妊リスクにつながりにくいラインを見ていってみましょう。
心疾患のリスクや糖尿病のリスクによって不妊リスクが高まる事も
知られています。
体に負荷がかかると細胞は酸化ストレスにさらされてダメージを受けていましまいます。
そのため、生殖細胞も同じように心疾患リスクが高まったり、糖尿病リスクが
高い状態だと不妊リスクが高まっています。
そのためのラインをロンドン大学の研究をもとに見ていってみましょう。(4,5)
ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアから約60万人のデータのもと、
労働時間と心疾患の関係について8.5年間ほど追跡した結果、
週の労働時間が40時間までなら問題なく、その後労働時間が増えるごとに心疾患リスクは
高まる傾向にありました。
仕事のストレスはもちろん、運動不足や、飲酒などの影響も出てきやすくなって
心疾患リスクを高めているようです。
さらに、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、日本から約22万人のデータのもと、
労働時間と糖尿病の関係を7.6年間追跡した結果では、
週の労働時間が33〜40時間までなら特に問題は出ないが、55時間を超えると
糖尿病リスクが30%高まったようです。
長時間の労働によってストレス度が増し、リラクゼーションが低下睡眠の質にも
影響が出ることが原因のようです。
週に40時間はすぐに超えてしまうというレベルかもしれません。
不妊リスクを高めないようにするには、適度に調整するしかないという点も
ありますし、ストレスケアに力を入れていってあげることが、
仕事ストレスによる不妊リスク軽減にもつながっていきそうですね。
妊活に専念しようとしてもストレスが、かといってなんとか両立しようとしても
労働時間が長いとデメリットも増えるため、夫婦で話し合ったりしながら
働き方と妊活については進めていくとよいのではないでしょうか。
妊活には、年齢的な制限もある事を考えた 働き方を
働くなら、今の仕事をやめてしまうとキャリアが・・・と気になる方もいるかと思います。
ただ、それでも妊活には年齢的にどうしても限りがあるという点もあり、
できるだけ若いほど、時間をかけないほど妊娠しやすいという点はあります。
焦ってしまうのもよくはありませんが、今しかできないいうのも妊活かもしれません。
あまり、キャリアにこだわったり、仕事しないとと頑張りすぎても、
不妊リスクを高めてしまっては本末転倒というところもあります。
無理して両立よりも、適度な両立を心がけたいですね。
あくまでそれは理想にはなってしまうかもしれませんが、
後で後悔することもできないので、やはり仕事と妊活では、選択にも悩むことでしょう。
上記の仕事についてのラインを参考に、お役立ていただければと思います。
参考文献
(1)American Journal of Obstetrics and Gynecology Preconception blood pressure and time to pregnancy among couples attempting to conceive their first pregnancy
(2)Nobles CJ et al., Preconception blood pressure levels and reproductive outcomes in a prospective cohort of women attempting pregnancy. Hypertension. 2018 May;71(5):904-910.
(3)A shorter working week for everyone: How much paid work is needed for mental health and well-being? https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2019.06.006
(4)Long working hours and risk of coronary heart disease and stroke: a systematic review and meta-analysis of published and unpublished data for 603 838 individuals
Published:August 19, 2015DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(15)60295-1
(5)Long working hours, socioeconomic status, and the risk of incident type 2 diabetes: a meta-analysis of published and unpublished data from 222 120 individuals
Published:September 24, 2014DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-8587(14)70178-0