不妊治療をするとストレス・精神的に病みやすくなるリスク大
不妊で悩むご夫婦が5.5組に1組という割合で、不妊治療についても芸能人が受けた、
周囲の人が受けたという事も耳に入るようになって、今では一般的になってきているのかもしれませんが、
不妊治療を受けた場合の負担感が無くなるわけではなく、
妊娠確率がものすごく高いというわけではないですが期待感の大きさや
不安やプレッシャーから治療を選択する傾向も増えているかもしれません。
その不妊治療がさらにストレスを多く感じ、精神疾患にかかる割合や、生活の質の低下につながっている
という事は実際に体験した人でないと痛感はできずにいるかもしれません。
カウンセリングをしていても、このつらさは体験した人でしかわからない、
周りからは理解されないと思うと話される方も多いです。
だからこそ、妊活セミナーのように同じ悩みを抱えた人同士で話がしたい、わかってもらいたい
分かり合いたいという気持ちを強く持っている傾向を感じます。
研究より分かった、不妊治療が及ぼす、治療中、そして治療後への影響についても知って、
そのうえで対策をとりながら進める事が妊娠しやすさ、子どもを授かった後にも良い影響になって
行くと思います。
不妊治療が精神疾患リスク高める?
不妊治療によるストレス度はかなり高く、心身症レベルだといわれています。
不妊治療を受ける事によって、ストレスを抱え、精神的な負担から、
精神疾患にかかるリスクが高まる可能性を指摘している論文(1)があります。
オランダでの研究です。32施設(おおよそ国全体の不妊治療施設の3分の1)にてランダムに施設の規模に合わせ
対象者を抽出し、横断的に行われた研究です。データ数も豊富にあり、アンケート調査に協力してもらい
回収できた696人の女性と520人のパートナーからのアンケートを分析しています。
結果としては、不妊治療を受ける女性はパートナーと比べて、生活の質QOLが低く、
精神的、心身的、社会的の準指標でも低いということがわかったというものです。
精神的に不安感が高まったり、うつ度がます、不妊を受け入れられないといった気持ちの部分も
男性より高く、生活全般に質が低下してしまっているというのもかなりつらいものです。
不妊治療を始めると、生活の中に通院が入り込み、仕事や家事、そういったものとの調整、
友達関係にも影響が出始め、とても日々の生活を楽しめるという状況ではなくなってしまっています。
精神的に病気にもなってしまうリスクが高まるのですから、かなりサポート体制を整えておく
必要があるといえそうです。Hum Reprod 2013; 28: 2168–2176
不妊治療で妊娠するとその後の育児にもストレスフル
不妊治療後に妊娠したという場合でも、妊婦さんは自然妊娠の妊婦と比べて
情緒不安定になりやすくさらに、その後の育児においても子どもを過保護に扱ったり
過剰な期待をするといった育児への不適応が指摘されています。(2)
研究では、不妊であったこと自体が問題となるだけではなく、治療中の経験がその後の妊娠に対する
感情に影響を与えると考えるべきであるとしています。
不妊治療中のストレスや夫婦関係が妊娠中の女性や男性に与える影響を明らかにすることを目的とし検討を行った結果、
不妊治療を経て妊娠した女性は、妊娠したことに対して肯定的な感情を強く持てる一方で
それを強く望んでいた者ほど流産に対しての不安が高くなるという事がありました。
不妊治療中に家族との関係によって生じたストレスと妊娠への感情との間にも関連が認められ、
不妊治療中における夫婦間の協力しあえるようにサポートを受ける、
また女性の精神的なストレス緩和のサポートが必要といえます。
Influence that infertility and infertility treatment experience have on feeling about pregnancy
不妊治療を受けて妊娠しなかった場合はうつ・不安障害の確率増
フィンランドの研究論文では、2261名を無作為抽出し、
その中から338名の不妊体験者と未体験者を比較した研究が行われ、精神的な影響やQOLについて
調べています。女性では20%の方、男性では9%の方が不妊を経験したということのようです。
その中で、不妊治療を受け、お子さんを授かっていないという女性は、
不妊治療を受けていない女性と比べるとうつ病のリスクが3.41倍、不安障害が2.67倍と高くなっています。
不妊治療を受けお子さんがいる女性においては、パニック障害のリスクが、不妊治療を受けていない女性と比べて
2.58倍と高かったという結果が出ています。
男性について、不妊治療経験がある男性は、ない男性と比べて著しくQOLが低いという結果になりました。
不妊治療を受けたことによる、精神的に受けるダメージの大きさや、
妊娠できてもできなくてもその後が大きく人生の満足度に影響を与えていく点も
知ったうえで夫婦で臨んでいく必要性がありそうです。
不妊治療後に妊娠できた場合でも、その影響が出てくるのですから、
特にストレスには認知の問題が大きく影響するため、認知行動療法などにも取り組んだり、
ストレスへの適切なケアができるようにスキルとして身につけておくとよいといえますね。
不妊治療で必ず妊娠できるわけではない
不妊治療と言っても、やはり妊娠率がとても高いわけではないため、
治療を受けて赤ちゃんを授かれないというケースも多いのです。
デンマークではより大規模な研究がなされ、不妊治療後に子供を授かった人と、授からなかった女性とで
精神的疾患の罹患率を比較しています。
不妊治療を行った約100,000人のデータを解析し、53547名(54.5%)の女性が治療後に妊娠したのと、
44773人(45.5%)のは治療後に妊娠しなかった人とでは
妊娠していない女性は精神障害 1.17、アルコール中毒リスクが2.02倍、統合失調症リスク1.46倍と、
治療後に妊娠した女性と比べて高い結果が出てるといいます。
治療しても授からなかったという事が、とても大きなダメージとなる事も
踏まえ妊活中は支え合える夫婦関係を築き、外部にも精神的にサポートを受けられる
体勢を整えながら妊活をすすめると、妊娠しやすく、また妊娠した後にも
良い子育てにもつながっていくことでしょう。
参考文献
https://www.translatetheweb.com/?from=&to=ja&dl=ja&a=https%3A%2F%2Facademic.oup.com%2Fhumrep%2Farticle%2F28%2F8%2F2168%2F661092
Differences in quality of life and emotional status between infertile women and their partners
https://academic.oup.com/humrep/article/28/8/2168/661092
京野アートオフィシャルクリニック