鉄の過剰摂取が不妊や卵子の劣化の原因に 妊娠しやすい食事とは
妊娠しやすい体つくりに必要な栄養素として鉄があります。
そのため不足すると流産しやすい、妊娠しにくくなってしまうようになります。
妊活中は、妊娠できるように色々取り組まれているかと思いますが、妊娠できた後も、順調に受精卵が育ち
ママのおなかの中でしっかり胎児が育てるように摂取に気をつけたい栄養が鉄分です。
鉄という栄養素の働きや不妊との関係、鉄分が多く含まれる食事などについてご紹介いたします。
鉄の効果・働き
鉄分はミネラルの一種であり、ほんの少しですが体の中では重要な働きをしてくれています。
体内にはおよそ3〜4gほどと少量ですが存在し、7割ほどは赤血球という主に酸素を運ぶ役割のある血液の中の細胞の
ヘモグロビンという成分として使われています。
その他にも、消化や代謝などにかかわる酵素を作り上げる成分の一部になってもいます。
残りの3割ほどは、筋肉や肝臓、ひ臓、骨髄などに蓄えられています。
その鉄分の主な役割・働きなどをみていきましょう。
・酸素を細胞のすみずみにまで届ける
ヘモグロビンは、ヘムという鉄の部分と、グロビンという物質から構成されるタンパク質です。
ヘモグロビンの働きとしては、呼吸から取り込んだ酸素を全身の組織・細胞に運び届けるという
重要な役割を果たします。生命の維持には絶対に欠かすことができない部分となります。
そして、その後、二酸化炭素受け取って吐き出す息になるように肺へ戻すことをしています。
ヘム鉄の部分が酸素と結合して組織に送り届けているのです。そのためヘム鉄が不足すると
細胞に十分な酸素を送り届けられず、酸素と二酸化炭素のやりとりが滞ってしまうようになってしまいます。
・ホルモンバランスを司る神経の伝達物質に関わる
脳内では、気分や感情などにかかわるセロトニンというホルモンや、
物事への関心・意欲などにかかわるドーパミンなどの神経伝達物質をはじめ、色々な
神経伝達物質が作り出されています。そして、ホルモンバランスを保つことに関わっています。
鉄分は、こうした神経伝達物質の合成に必要な栄養素にもなります。
そのため、不足することで、神経伝達がうまく機能せずホルモンバランスの乱れを招くといった
ことにもつながりやすくなってしまいます。
・活性酸素の除去
活性酸素が必要以上に増えると、
正常な細胞を傷つけたりもしてしまいます。
老化を促進したりするなど、様々な悪影響を与えます。
鉄を含む酵素であるカタラーゼやスーパーオキシドジスムターゼは、
こうした活性酸素を分解する働きがあります。
さびにくい体つくりには必要ですね。でも、一方でフェリチンには活性酸素を
生み出してしまう働きも持ち合わせています。
・免疫機能の維持
体内の鉄分が不足すると、
体内に侵入した細菌などを食べて殺してしまう役割のある白血球の一種である、
好中球の殺菌能力が低下してしまいます。
なので鉄は免疫機能が働くように維持してくれるのですね。
・ATP(アデノシン三リン酸)の生成
生体のエネルギー物質であるATPは、細胞内にあるミトコンドリアで生成されますね。
その時、鉄を含む酵素であるチトクロムなどが
電子伝達系という酸化還元反応をすることでATPを生成します。
精子や卵子の活性には絶対的に欠かせません。
鉄と妊娠しやすい体質との関係
めまいや疲れやすいといった症状は鉄不足による影響もあったりします。
鉄のもつ働き・効果によって妊娠しやすい体が作られていきます。
この栄養素がしっかり足りている事が、ホルモンバランスを整えたり、
子宮や胎盤・赤ちゃんにもしっかり栄養と酸素が届くようにもなり流産しにくい体質にもなっていきますね。
鉄はヘム鉄と非ヘム鉄に
鉄分といっても、ヘム鉄と非ヘム鉄に分けられます。
含まれる食べ物や実際に摂取してからの消化吸収の際の吸収率の違いによって
ヘム鉄と非ヘム鉄に分けられます。
ヘム鉄は動物性のタンパク質に含まれ、吸収率も高いのですが、
非ヘム鉄は野菜などの植物性の食べ物に多く含まれ吸収率が非常に低くなるのが特徴です。
必要な摂取量を補っていくには、吸収率がよい食材を中心に妊活中の食事献立を立てていくことも
見逃せなくなるでしょう。
ヘム鉄を含む食材(動物性食品)
豚レバー、牛レバー、鶏レバー、豚モモ肉、
牛赤身肉、卵、かつお、いわし、さけ、まぐろ、あじなど
赤身の肉や魚はバランスを考え、意識して摂取するようにしておくとよいでしょう。
非ヘム鉄を含む食材(植物性食品)
パセリ、小松菜、ブロッコリー、プルーン
ほうれん草、菜の花、キャベツ、納豆、枝豆、
吸収率のことを考えると、鉄分を植物から摂取しようとするよりは
別の栄養素と合わせて摂取するような感覚で野菜類は摂取していくとよいでしょう。
鉄分 1日必要摂取量について
鉄分の1日の推奨量は、成人女子では月経なしで6.0mg。月経がある場合は、
出血とともに鉄分がたた以外へ出てしまうため、推奨量が10.5mgほどになりますとなります。
含有量はある程度あっても、ヘム鉄と非ヘム鉄とでは吸収率がかなり違いますので、
動物性のタンパク質の摂取も大切です。
ただ、ビタミンCや緑茶に含まれるポリフェノールには鉄吸収を阻害するはたらきがあるものの
それが逆に適度な吸収に抑えてくれているのかもしれません。
地中海式食事療法のほどフェリチン濃度が低い傾向があり心疾患リスクも低い点からも、
適度なバランスで食事から摂取するという事がどうも大事なようです。
食品名 | 成分量 100gあたりmg |
あゆ/天然、内臓、生 | 24.0 |
たにし/生 | 19.4 |
しじみ/生 | 8.3 |
うなぎ/きも、生 | 4.6 |
どじょう/生 | 5.6 |
ちょうせんはまぐり/生 | 5.1 |
あかがい/生 | 5.0 |
食品名 | 成分量 100gあたりmg |
ぶた/肝臓/生 | 13.0 |
うし/肝臓/生 | 4.0 |
ぶた/じん臓/生 | 3.7 |
うし/第三胃/生 | 6.8 |
にわとり/心臓/生 | 5.1 |
女性にはどうしても不足しがちな栄養素
女性には最も不足しがちなのは鉄(Fe)なんですね。
月経がある女性にとっては、毎月ある程度の量の血が体外へ出ていく機会があるので鉄不足には陥りやすいと言えますね。
隠れ貧血として現代は3人に2人は不足気味と言われています。
不足気味かどうかチェックしてみましょう。
あなたは鉄分不足?チェック
あなたは鉄分が足りていますか?チェックしてみてくださいね。またクリニックでも
貧血の検査はできるので受けてみるとよいでしょう。
□立ちくらみ、めまい、耳鳴りがする
□肩こり、背部痛、関節痛、筋肉痛になりやすい
□腰痛、頭痛になりやすい
□ぶつけた覚えがないのによくあざができる
□階段をのるだけで疲れる
□夕方になると疲れてよこになる
□月経前になると心身の不調が現れる
□月経の出血量が多いタイプ
□便秘がち
これらにいくつチェックがついたでしょうか・・・・これらは、
「鉄」不足の目安になるんですね。
不足気味という方も、そうでない方も、貧血の症状や血液検査でひっかかってからでは
遅くなってしまいますね。妊活から出産までは
とにかく鉄分をしっかり補った食事を心掛けていきましょう。
ただ、通常はバランスがとれた食事をしていたらそれほど鉄不足では困らないはずです。
逆に鉄が過剰摂取の原因になったり、鉄フェリチンによる活性酸素が不妊リスクを
高めてしまわないようにという点も忘れてはいけないのでしょう。
地中海式食事療法は鉄分をいい状態で摂取し酸化レベルも低い
特に魚介類や野菜・果物から補うように
していきましょう。地中海式の食事療法を参考にしていくとよいでしょう。 妊娠しやすい食事療法としても
研究などで知られていますが、鉄の問題についても地中海式食事療法は有効ではないかと
言われています。(1)鉄分は適度に補給されている必要性があるものの、タンパク質と結合した
フェリチンは老化物質にもなってしまうため、体の抗酸化作用が高い必要性もあります。
その点も、他のヨーロッパの西洋的な食事よりもギリシャの地中海式食事療法の方が
酸化レベルが低いという事も言われています。その主な点が、赤身肉の摂取が少ない点と
野菜や果物が豊富で食物繊維の摂取量が多いことが鉄分の吸収に良い働きをしているからではないか
といわれています。
フェリチン・鉄分の過剰摂取は老化のもと
鉄分は不足してももちろん良くはありませんが、過剰摂取もやはり良くはないということです。
体の中でタンパク質を結合した鉄はフェリチンといいますが、これは老化物質の一つになります。
フェリチンは酸化しやすい性質を持っているため、酸化ストレスレベルが高い場合は、
摂取した鉄がタンパク質などと結合しされにそれが酸化し老化が激しく進んでしまうのです。
例えば、糖尿病や高血圧の人ほどフェリチンレベルも相関して高いという事が言われています。(2)
糖尿病や高血圧は、不妊リスク要因として着目されていますが、フェリチン濃度が高い人は
逆に糖尿病のリスクも高まるようです。(3)
鉄分の過剰摂取は不妊リスクを高めてしまうため不足は避けたいところですが、過剰摂取も気をつけたい
ところになります。
糖尿病治療薬であるメトホルミンの使用が多嚢胞性卵巣症候群にも効果的という事が言われていますが、
このメトホルミンには、鉄分の吸収をブロックする働きもあり、(4)。
鉄分の代謝不全が炎症反応やミトコンドリアの不調などに影響を与えているのではないかといわれています。(5)。
体の炎症反応や酸化ストレスレベルを下げていくにはこちらも参照ください。
何事も適度にバランスをとった対策をしていない限り効果が出ないとか逆効果にもなってしまうようです。
月経血の逆流による鉄分が子宮内膜症の原因?
子宮内膜症の原因はわからず、様々な説が出ていますがハッキリとしていないのが現状ですが、
更に新しい説も浮上しています。血液の逆流によって子宮内膜症がおこるという子宮内膜移植説があります。
腹腔内への月経血が逆流してしまう事は90%の女性にみられる現象でありながら、
子宮内膜症は5~10%の方にしか発症はしていません。血液が逆流するという説は子宮内膜症の発症に
重要な要素でありながらこれだけでは十分とはいえませんでしたが、さらに決定づけるような説が出てきました。
それが逆流した血液に含まれる鉄の存在です。
鉄が炎症性サイトカインや酸化ストレスにより活性化されると、子宮内膜症が悪化し、
逆に炎症反応や酸化ストレスにさらされる経路を抑制してあげた場合は、子宮内膜症が改善したという
研究があります。(6)
過剰な鉄は子宮内膜症の原因になったり、細胞の老化に関係してしまうため、
いい状態で鉄分を摂取できるようにしていくことを心がける事はとても大切な事だと言えるでしょう。
フェリチンは不妊リスクと関連している
男性でも、ミトコンドリア内にフェリチンが存在し、その量によって雄マウスは妊孕性が低下した
という事が報告されています。
フェリチン濃度が高い雄マウスは、精巣上体が軽く、精子が少なく、精子内で生産されるエネルギーである
ATP量も減少してしまっていて、ミトコンドリアがうまく機能できなくなってしまっています。
フェリチンによって生まれる活性酸素濃度が男性不妊のもとになってしまっています。(7)
女性でも、不妊症女性ではフェリチンをため込んでしまう傾向があり、出産経験がある女性は
フェリチンを外に排出する傾向があり、フェリチンが不妊リスクと関連がある事は確かです。(8)
鉄が原子卵胞へのダメージ・卵巣早発不全にも関係
鉄は卵巣機能への影響もとても大きいようです。
特に原子卵胞はX線などの影響をうけやすく、特にマウス鉄荷電粒子を浴びせた場合、
1週間後にはDNA損傷・酸化ストレスレベルが高まり、細胞アポトーシスが増え
卵胞数が減少するという事がおきました。またFSHやLHの上昇もおき、
早発卵巣不全のような状態になったという事です。(9)
抗酸化作用や抗炎症反応を高めていくことでそのダメージが軽減もされるため、
やはり心がけたいところですね。
チョコレート嚢腫でも鉄の影響が確認
チョコレート嚢腫のある側のフェリチン濃度は高く、また採卵できる数も有意にすくなく
鉄が卵子の成長などにも影響が出ているが示されています。(10)
チョコレート嚢腫の鉄濃度は他の卵巣嚢腫液中の鉄濃度に比べて高く出ています。
鉄はチョコレート嚢腫においても影響が出ていることがわかります。
特定の疾患ではフェリチン濃度も高まってしまう
血清フェリチンの1ng/mlは貯蔵鉄8~10mgにであるため、貯蔵鉄量が全体的に低下した鉄欠乏性貧血では
小球性低色素性貧血,血清鉄低下,総鉄結合能増加に加え,血清フェリチン低下が特徴的です。
潜在的な鉄欠乏な状態は血清フェリチンのみが低下した状態です。
逆に、血清フェリチンの上昇が認められたときは鉄が過剰に体内に蓄積された状態になり、
不妊リスクが高まるという事を考えておいた方が良いでしょう。
そして、そのフェリチン濃度が高まってしまう病気もあります。以下のものがあげられます。
関節リウマチ、 ヘモクロマトーシス、 ヘモクロマトーシス、 劇症肝炎、 膵炎、 SLE、
悪性リンパ腫、 肝硬変、 急性肝炎、 急性白血病、 血球貪食症候群、
再生不良性貧血、 赤芽球癆、 鉄芽球性貧血、 糖尿病、 慢性骨髄性白血病、 溶血性貧血、
膠原病、 ヘモジデローシス、 悪性腫瘍、 癌、 成人Still病、 慢性炎症性疾患、 無トランスフェリン血症
慢性的な炎症反応や免疫異常、そして老化などと関連が多い病気が並びます。
排卵以降、着床の頃はプロゲステロンの影響によって血流は抑えられ、受精卵が酸化ストレスに
さらされないようにコントロールされています。逆に血流が促進されたり、
酸素濃度が高いほど妊娠率が低下したり、流産率が高まっている点からも
酸素運搬と関わる鉄が多い状態はやはり受精卵や妊娠初期はデメリットになってしまいます。
まとめ
鉄分は食事からバランスよく摂取するようにし、妊娠しやすい体つくりの役割をはたす
栄養素がいい状態で足りている状態をこころがけましょう。
また、鉄分は食事の摂取の仕方によって吸収率が変わったりもしますので、
神経質になりすぎることはないですが、他の食品などと合わせバランスよく食べる食事が
大切になっていきます。
妊娠しやすい体つくりには食事から栄養を摂取できているという事も大事ですが、
基本的な土台つくりは普段の生活習慣をはじめ、ストレスなどを上手にコントロールし
精神的にも穏やかに過ごせていることも妊娠までの期間を縮めてくれるように働いてくれますよ。
特に抗酸化作用・抗炎症作用は高めておいた方が鉄による悪影響を軽減できそうです。
そして、生理はデトックスというのもある意味あながち間違いではないというもの興味深いですね。
生理は鉄を含む血液を排出するため、女性の方が寿命が長いとも言われていたり献血などをする人ほど
心疾患リスクが低下したという研究もあります。
鉄を排出する事で、老化を防いでいるという事だったのですね・・・。